車線合流で「サンキューハザード」法律で定められてないけど「やった方がいい」って本当? うっかり違反になる「NGなハザードの使い方」とは?
「サンキューハザード」とは、車線合流などで譲ってもらったあと、数回点滅させて感謝を伝える行為です。法的には意味はなくても、やった方がいいのでしょうか。
「サンキューハザード」ってどんなもの?
一般道や高速道路での車線合流などで道を譲ってもらったあと、感謝を伝えるべくハザードを数回点灯させるのが「サンキューハザード」と呼ばれる行為です。
この行為自体は道路交通法では規定されていない使い方で必ずしもやらなくてはいけないものではないのですが、“暗黙のルール”となっているところもあり、怠ったばかりに「あおり運転」の被害者になるケースも報告されています。
果たしてサンキューハザードは必要なのか、それとも不要なのでしょうか。

法的な観点からハザードランプの使い方を改めておさらいしてみます。
道路交通法でのハザードランプ(非常点滅表示灯)の使用方法について義務付けられているのは「通園・通学バスが停車し幼児や小学生が乗降しているとき」「視界不良や故障などで道路上に停車せざるをえないとき」「夜間、道幅5.5m以上の道路に停車・駐車するとき」「レッカーでクルマがけん引されるとき」など、非常事態を周囲に認知してもらうときに使用します。
合流などで譲ってもらったときのサンキューハザードや、駐車スペースにクルマを停めるために周囲に告知する「駐車告知ハザード」、前方に渋滞が発生していて減速することを後続車に知らせる「渋滞告知ハザード」などは、法的には効力はありません。
また警察の判断としては、悪質な使用でもない限り、推奨も取り締まりもしていません。
ただし、使用しなければいけない場面で点灯させないと「合図制限違反」、逆に消し忘れて点灯したまま走り続けると「安全運転義務違反」となります。
サンキューハザードや渋滞告知ハザードは、もともと長距離ドライバーがマナーとして使用していたことから慣例化したとも言われています。
教習所の元指導員 I氏は、周囲に間違われるような状況でもない限り使用に肯定的だと言います。
「法的には明文化されていませんし、むしろ義務付けられた場面での不使用は違反となりますが、サンキューハザードなどの意思表示、渋滞最後尾の危険告知目的などはすでに定着したマナーであり、やってもやらなくても違反は問われません。
昨今は、感謝や謝意を伝えなかったばかりに、あおられてしまうなどのトラブルもなくならないことから、問題ない範疇で使ったほうがトラブル予防策になると言えます」
では、なぜサンキューハザードが必要なのでしょうか。そこには人間の心理が影響しているようです。
他人から親切にしてもらったりギフトをもらうと、「お返しをしなければいけない」という心理が働きます。こういった心理を「返報性の法則」と呼ぶのですが、「道を譲ったら(相手から)感謝を伝えるのが常識」という心理があり、それに反する行為(感謝なしの行動)が相手を怒らせてしまうというわけです。
特に昨今は、相手の不義理を許す心の余裕が失われてきているのかもしれないとI氏はいいます。
「最近は、些細なトラブルが重大な事件に発展するケースも増えています。余計なトラブルを回避するためにも、道を譲ってもらったらサンキューハザードをしておいたほうがいいと最近は思うようになりました」
なお、サンキューハザードと似たようなもので、お礼を示すべくクラクションを短く鳴らす「サンキュークラクション」はお勧めできない行為となっています。
「クラクションを鳴らすのは、『警笛鳴らせ』の標識がある場所や見通しの悪い場所など危険の防止目的と定められており、歩行者や前走車に感情を伝える目的でのクラクション使用は『警音器使用制限違反』となり、人によってはクラクションを鳴らされたことで怒りの感情を持つ原因にもなりますので、やらないほうが得策です。
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道を譲ってサンキューハザードされると嬉しいもの。自分がされて嬉しい行動、されたらイラっとする行動を自分で判断することが重要で、法制化されていないマナーだからこそ、相手を思いやる気持ちが必要なのかもしれません。
Writer: くるまのニュースライター 金田ケイスケ
2000年代から新車専門誌・輸入車専門誌編集部を経て独立。専門誌のみならずファッション誌や一般誌、WEB媒体にも寄稿。
中古車専門誌時代の人脈から、車両ごとの人気動向やメンテナンス情報まで幅広く網羅。また現在ではクルマに限らずバイクやエンタメまで幅広いジャンルで活躍中。




















