日産が「3列シートミニバン」に斬新「“ツルツル”シフト」採用! もはや「シフトレバー」は“古い”!? なぜ「新シフト」が普及しているのか

ボタン式シフトの採用が相次ぐ「日産」や「ホンダ」

 ATのシフト操作に関してはその後、さらに技術は発展しました。

 それまでのATシフトポジションは、ワイヤーを通じて機械的にトランスミッションへ伝達されていましたが、スイッチ操作による電気信号でトランスミッションへ伝達する「シフト・バイ・ワイヤ」方式(電制シフト)が普及していくのです。

「シフト・バイ・ワイヤ」方式(電制シフト)の普及はトヨタ「プリウス」(2代目)からはじまった
「シフト・バイ・ワイヤ」方式(電制シフト)の普及はトヨタ「プリウス」(2代目)からはじまった

 シフト・バイ・ワイヤ方式は、シフトレバーそのものの形状を自由にすることができます。

 2003年にデビューしたトヨタ「プリウス」(2代目)では、指先で軽くシフト操作できるスティック型の「エレクトロシフトマチック」が採用されています。

 このモデルが大ヒットを記録すると同時に、シフトバイワイヤ方式が広く一般に普及することになりました。

 その後シフトレバーの形状は、ダイヤル式、ボタン式と多岐に渡っています。

 その背景のひとつに、ハイブリッド車が普及し、ギアシフトの概念そのものもそれまでのエンジン車とは大きく異なったということもありました。

 最近では、2022年11月にフルモデルチェンジしたセレナ(6代目)が、今までのATシフトの常識を覆すような形状となって、ちょっとした物議を醸しました。

 6代目セレナは、インパネシフトを採用していますが、シフトボタンが家電製品のスイッチのようにすっきりとしたフラットな形状をしています。

 また、ボタン数は「P・R・N・D」の4つとミニマルになっています。

 日産は6代目セレナ発表時に「スッキリとした見た目と分かりやすい操作性を実現しました」と説明しており、デザイン性と操作性を兼ね備えたものだとしています。

 この形状についてSNSでは、その斬新なデザインに驚きを示すとともに「操作しにくそう」「エアコンのスイッチの近くにあるので誤操作しそう」といったコメントが多数投稿されています。

 しかし、実際にセレナを買ったオーナーからは「実は使いやすかった」などと好感を持った様子のコメントが多数寄せられていることからも、使い勝手は極めて良さそうです。

 日産ではその後も、北米向けの「ムラーノ」や本格四輪駆動車の「アルマーダ」、中東向けの「パトロール」などのグローバル市場向けSUVモデルに相次いでボタン式シフトを採用していることからも、デザイン性のみならず操作性の面でも強い自信を持っていることがわかります。

 こうしたボタン式シフトは、ホンダも多く採用しています。

 ただ日産のようなミニマルなものではなく、ボタンは大きく独立し、Rは凹んだ位置に配置するなど造形は大きく異なっています。

 トヨタがプリウス以降に幅広い車種で採用中のスティックシフトも含め、各社の設計思想の違いも興味深いところです。

※ ※ ※

 ハイブリッド車が主流となった現在では、かつてに比べシフト操作をする頻度が減ってきています。

 例えばDレンジに入れたままでも、エンジンをOFFにすれば自動的にPレンジに入るなど、利便性と安全性も向上しています。

 旧来のシフトレバーを備えたクルマは今後、さらに姿を消していくのかもしれません。

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Writer: 佐藤 亨

自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。

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