4速MTのみ! 三菱に斬新「1人乗りモデル」あった! 600キロ切り「軽量3ドア」×超割り切り「運転席のみ仕様」が凄い! 1年で消えた伝説の「おひとりさま専用車」とは

レーシングカーでもない限り、市販された軽自動車に定員1名のクルマは存在しない…。と思いきや、三菱「ミニカ」には、なんとその名も「1シーター」というグレードが販売されていたのです。どのようなモデルだったのでしょうか。

わずか「1年」でカタログ落ち… どうやって使うの?

 クルマには乗車定員が定められています。運転者を含め、一部のスポーツカーでは2名、軽自動車なら4名、SUVやセダンなどの乗用車で5名、多人数乗りのミニバンでは7名・8名など、車種や大きさに応じてさまざまな定員が設定されているのはご存知の通りです。
 
 逆に運転者1名しか乗れないクルマでは、フォーミュラカーなどのレーシングカーが思い浮かびますが、なんと一般的な軽自動車に、定員が1名という「ワンシーター」モデルがあったことをご存知でしょうか。

えっ、「1人」しか乗れなくてどうするの?
えっ、「1人」しか乗れなくてどうするの?

 それが、1993年に登場した三菱のエントリー軽コンパクト「ミニカ」(7代目)に存在した、その名も「1シーター」です。

 高品質な内装に加え、当初から新規格のボディサイズで設計されて広い室内を誇る7代目ミニカは、6代目ミニカの流れを汲み、さらに丸みを強くしたデザインが特徴です。

 上位グレードには4気筒エンジンを据え、さらに1気筒あたり5バルブ+インタークーラー付きツインスクロールターボから64psを発生する4気筒エンジン、ファジィ制御式4速オートマチックトランスミッション搭載車もカタログ入り。当時の軽自動車としては贅沢なメカニズムを採用しています。

 バリエーションも多彩で、前述のターボエンジンを搭載したフルタイム4WDの「DANGAN-4(ダンガン4)」、レトロ調モデル「タウンビー」や、女性向けグレード「グッピー」などが用意されました。

 一方、ミニカのようなボンネット付き軽自動車の役目のひとつである安価でシンプルな「ボンバン(ボンネット付きバン)」を担う、4ナンバーの商用バンシリーズも健在で、2WD・4WD合わせて5つのグレードを用意。

 ミニカの廉価版と同じく40psを発生する3気筒エンジンを積み、トランスミッションも3速オートマチック、もしくは4速マニュアルが設定されていました。ボディは3ドアのみで、バンの上位グレード「Cf」「Cf-4WD」以外は、前後バンパーも未塗装でした。

 その下のグレード「Ce」までが小さな折りたたみ式リアシートを備える4人乗りで、このほか前席のみの「2シーター」、そして今回紹介する「1シーター」がラインナップされていました。

 バンなので最大積載量が決められているのですが、4人乗りでは4人乗車時100kg・2人乗車時で200kg、2シーターでは200kgとされていました。

 そして、1シーターだと1名=50kg換算なので、最大積載量は250kgになるかと思いきや、さにあらず。こちらも200kgの設定です。なお1シーターでは、4速マニュアルトランスミッションしか選べませんでした。

 1シーターのクルマとなると、気になるのはその車内です。

 リアシートが備わらないのは言うまでもなく、助手席側にはもちろんシートが置かれていないのですが、シートを保持するレールも未装着で、まったくの空きスペースが作られています。

 さすがに床のカーペットは省略されていませんが、助手席が無く内装も質素な内装は、もはやスパルタンささえ漂わせており、まるで乗用車ベースのレーシングカーのようです。

 各種の快適装備がオミットされているだけでなく、思いのほか重量があるシートを持たないことから察せられるように、車重は2シーターより20kg軽い590kg。

 5ナンバーの乗用モデルで一番軽い「Pe」の3ドア・5速マニュアルモデルが640kg、前述のDANGAN-4(3ドア・5速マニュアル)では780kgだったので、1シーターがいかに軽かったのかわかります。

 このように特徴が多いミニカ1シーターですが、助手席のないスペースをどう生かすか、筆者(遠藤イヅル)には想像がつきませんでした。シャーシの造形が残っており、床面がフラットではないので荷物を置くのにも不便そうなのです。

 外回りの営業車として使うにしても、いざというとき同僚1名さえも乗せることもできず、これも不便だったのではないでしょうか。

 それが理由なのかはわかりませんが、実際に、1シーターは発売翌年秋にカタログから早々にドロップ。短いモデルライフを終えています。

 ちなみに、2024年10月10日に発売されたホンダの軽商用EV「N-VAN e:」に、1人乗り仕様が登場して話題となりました。

 昨今のインターネット通販隆盛で軽バン需要が増えており、この場合では助手席に人を乗せる機会も少なく、助手席分を積載スペースにしても荷物を積みたい、という希望に沿った設計になっているように思います。

※ ※ ※

 1シーターでそもそも装備が少なく軽量、というミニカ1シーター。

 足回りを固め、DANGAN-4の20バルブターボエンジンをスワップしたらちょっとしたレーシーなホットハッチが出来上がりそうですが、1シーターは中古市場に出てくる機会は極めて少なく、残念ながらそのプランを実現するのは難しそうです。

【画像】超カッコイイ! これが斬新「1人乗りの軽コンパクト」です! (45枚)

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Writer: 遠藤イヅル

1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。

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2件のコメント

  1. 「くるまの」ライターなのに、
    ウオークスルーバンって知らないの?!

  2. >市販された軽自動車に定員1名のクルマは存在しない…。
    ↑ミゼットIIがありますが?

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