マツダ「SKYACTIV X」、回してみて見えたものとは? 話題の新エンジン搭載車に試乗

ガソリンエンジン、突き詰めたらどうなった?

 ではこれを実現するために行った手順を、ひとつずつ説明して行きましょう。

 まずマツダはこの性能を達成するために、究極のリーンバーン(希薄燃焼)としてガソリンと空気の比率(空燃比)を「1:30」という非常に高い数値に設定しました。ガソリンエンジンの理想空燃比は「1:14.7」(ガソリン1gに対して空気は14.7g)と言われており、その倍以上の空気をエンジンのシリンダーに押し込もうとしたのです。

 しかし従来のスパークプラグによる点火では、この高い圧縮に対してガソリン燃料を満足に燃やすことができません。そこで「ガソリン燃料にして、ディーゼルエンジンのような圧縮による自然着火(圧縮着火)ができないか?」と考えました。

 これまでガソリンエンジンで圧縮着火ができなかった理由は、燃料(正確には燃料と空気の混ざった混合気)の性質上、安定して圧縮着火できる範囲が非常に狭かったからです。そしてマツダによれば、エンジン回転2000rpm付近の実例で言うと、吸気温度の許容高低差が摂氏3度ほどという非常に狭い範囲でのみ、これが安定したといいます。

 こうした外的な温度を常に管理するのは事実上不可能。また圧縮比で制御しようとした場合、アクセル開度に応じてこれを15~30までリニアに調整できる機構が要求されるのですが、現状これを実現できる機構はありません。

配布資料より。スパークプラグによる火花点火で、瞬時に適度な圧縮着火を起こさせる状態を作り出す(画像:マツダ)。

 これを解決するためにマツダは、逆にスパークプラグの力を借りました。

 ピストンによる圧縮で15~16の圧縮比を稼ぎ、残りはスパークプラグによる膨張火炎球の爆発圧力(エアピストン)で30までこれを高め、圧縮着火を促したのです。

 この火炎球は状況に応じてその点火時期と圧力が制御されます。そしてマツダはこの機構を「SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition:スパークプラグによる点火を制御因子とした圧縮着火)」と呼んでいます。

 また燃料比を高めるために「高応答エアサプライ」という装置によって、必要な空気量が送り込まれます。これはいわばスーパーチャージャーと同じ原理ですが、その目的はパワーを上げることではなく、空気を増やしてリーン(燃料希薄)な状況を自由に作り出すための装置だといいます。また空気を沢山入れることでエンジンは比熱比も高まり、燃焼温度が下がることでエンジンの効率向上や、冷却損失の低減が可能となります。

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