全長3.7mで「7人」乗れる! トヨタ「スライドドア付きミニバン」あった! 「シエンタ」より小さいのに「ちゃんと座れる」って最高! 魅力ありすぎる「3列ワゴン」とは

2000年代前半には、軽自動車ベースの小さな3列シートミニバンが各社から販売されていました。そのひとつが、トヨタ「スパーキー」です。

使い勝手サイコーな「スパーキー」 サイズ肥大の今だから欲しい?

 限られた外寸で、最大限の室内空間を構築する軽自動車。“箱庭”的に要素が詰め込まれた設計は、コンパクトカーとしても優秀で、一回り大きな小型車にその能力を生かしたクルマがいくつかあります。
 
 そんな「軽自動車ベース」の7人乗りモデルを、トヨタが発売していたことをご存知でしょうか。

トヨタ「スパーキー」
トヨタ「スパーキー」

 それが、2000年に発売されたトヨタ最小ミニバン「スパーキー」です。

 スパーキーは、トヨタと提携関係にあるダイハツの軽1BOX「アトレー」に、1.3リッターエンジンを載せて小型車登録としたクルマで、車内には2+3+2人掛けの3列シートを備えて7名乗車を実現していました。

 同様な成り立ちを持つモデルにスバル「サンバー」をベースにした3列シートミニバン「ドミンゴ」がありますが、スパーキーでは、アトレーのリアオーバーハングを延長して室内空間を拡大したことで、全長はアトレー比で370mm長い3765mmに。

 車体本体の幅こそ軽自動車規格のままでしたが、サイドモールの装着により40mm増の1515mmへとわずかながら全幅も広げられていました。

 ベースとなった4代目アトレーは、小さなボンネットを持つミニバン型スタイル、かつフロントタイヤをかなり前方に置くレイアウトが特徴です。

 これに対してスパーキーは後部のみを伸ばしたため、視覚的なマスが後方に集中するサイドビューとなり、それに釣り合うよう、フロントバンパーを突き出してバランスを取っていました。

 ダッシュボードなど内装の多くはアトレーからの流用でしたが、装備の充実・質感の向上が図られています。

 2列目シートは前後に480mmスライドでき、シートの端にはアームレストも備わっています。

 3列目も背もたれの高さはしっかり確保されており、補助的な存在となりがちなミニバン・SUVの3列目シートよりも快適に着座が可能でした。

 また、3列目を畳めば積載力を保ったままで5人乗車状態にすることもできます。2列目も畳むことでさらに大きな荷物を積めるなど、多彩なシートアレンジも自慢でした。

 搭載される「K3-VE型」1.3リッターDOHCエンジンは、可変バルブ機構「DVVT」を備え、最高出力90psを発生。額面数値は小さいですが、排気量拡大によるトルクの増大効果は大きく、重くなった車体を走らせるには充分でした。

 そんなスパーキーですが、厳密にはダイハツの「アトレー7」のトヨタ版(OEM)です。

 さらにアトレー7には商用版の「ハイゼットグランカーゴ」もありました。ハイゼットグランカーゴは、右ハンドル市場の海外でも「エクストール(Extol)」として販売されました。

「全長3.8m以下の7人乗り3列シートミニバン」という、今見ると非常に魅力的な個性を誇ったスパーキーでしたが、スパーキーは2003年に、アトレー7も2004年に相次いで生産を終了してしまいました。

 軽自動車を小型車化して3列シートを与えたクルマには、他にも三菱「タウンボックス ワイド」、スズキ「エブリイ+(のちにエブリイランディ)」などもありましたが、こちらもそれぞれ2001年と2005年に販売を終えています。

 その理由には、軽自動車ベースゆえに3列シート車としては絶対的に居住性が低いこと、サスペンションなどの基本的な走行性能には限界があったことなどがあげられます。

 それから2000年代前半から現在に至るまで、小型ミニバンの「シエンタ」やホンダ「モビリオ」「フリード」が出現したのも、これらの軽自動車ベースミニバンの存在が大きく影響したのは間違い無いでしょう。

※ ※ ※

 このサイズ感で7人乗れるという利便性、背が高いこと、中古車が安価なこと、軽自動車ではないという「ちょうどよさ」もあって、現在スパーキーやアトレー7を車中泊やキャンピングカー用途で購入するユーザーもいるようです。

 ミニバンが一般的な選択肢である今だからこそ、軽自動車ベースとまではいかずとも、スパーキーのような小さなミニバンの再登場に期待したいところです。

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Writer: 遠藤イヅル

1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。

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