昨今、広大な室内空間と利便性がユーザーの心を掴み、家族層を中心に人気を博しているミニバン。
　
　そんななか、かつて日産はメーカー純正チューニングを施したエンジンを搭載し、超豪華内装を設えた「走り屋モデル」のミニバンを展開していました。
　
　一体どのようなクルマなのでしょうか。

　それは、日産のフラッグシップミニバン「エルグランド」の「ライダー ハイパフォーマンススペック」というモデルです。

　エルグランドは、1997年に初代モデルが登場し、高級ミニバンの元祖として広く認識されています。

　強い押し出し感のあるスタイリング、豪華なインテリア、高性能なV型6気筒エンジンなど、従来のミニバンにはなかった要素が詰め込まれ、瞬く間に人気を博しました。

　2002年には2代目が登場し、トヨタ「アルファード」が競合として投入されると、2004年にはホンダ「エリシオン」も市場に参入し、高級ミニバン市場は急成長を遂げました。

　そして2010年に登場した3代目エルグランドは、現行モデルとして今も販売されており、従来の縦置きエンジンと後輪駆動ベースのプラットフォームから、横置きエンジンと前輪駆動の新開発プラットフォームに刷新。

　これにより低床化と低重心化が図られ、走行性能が大幅に向上しています。

　またパワートレインには、最高出力170馬力・最大トルク245Nmの2.5リッター直列4気筒エンジンに加え、最高出力280馬力・最大トルク344Nmの3.5リッターV型6気筒エンジンを搭載した高性能仕様もラインナップ。

　通常モデルのほか、日産モータースポーツ＆カスタマイズが内外装をドレスアップしたモデルも展開され、多様な選択肢が用意されています。

　そんなエルグランドですが、特に注目すべきは、かつて存在した3.5リッター版のライダー ハイパフォーマンススペックです。

　このモデルは、オーテックジャパン（現：日産モータースポーツ＆カスタマイズ）が展開していた、内外装をドレスアップした「ライダー」シリーズに、2011年に追加された特別仕様車です。

　エクステリアには、専用のフロント・センター・リアクロスステーやYAMAHA製パフォーマンスダンパー（リア）を追加することで、より安定した走行を実現。

　足元には専用チューンドサスペンション、ダーク調の専用19インチ光輝アルミホイール、専用245／45の19インチタイヤ（ミシュラン・プライマシーLC）などが採用され、他にはない個性的な仕様となっています。

　2016年にはオーテックジャパン30周年を記念した「AUTECH 30th Anniversary」が登場し、ライダー ハイパフォーマンススペックにも特別な装飾が施されました。

　ダーククロムのエクステリアパーツやブラックとホワイトのコンビレザーシートなど、エルグランドにさらなる高級感が加えられています。
　
　そして3.5リッターV型6気筒エンジンには専用チューニングが施され、最高出力300ps・最大トルク361Nmまでアップデート。

　さらに専用のコンピュータとエキゾーストシステムを搭載するなど、走行性能を追求した「爆速仕様」として他のミニバンとは一線を画していました。

　しかし、その後のモデルチェンジによりライダー ハイパフォーマンススペックは2017年にカタログから姿を消してしまい、現在では入手が困難なモデルとなっています。

　なお、2024年9月6日時点での中古車市場では、90万円台から440万円台で販売されています。