新型ヴェルファイアがさらに上質&スポーティな走り心地に!? HKSの車高調「HIPERMAX S」に試乗して感じた「ブレないコンセプト」とは
上質な乗り心地のカギは「タイヤをいかに味方に付けられるか」
走り始めてまず感じたのは、試乗車はインチアップされているにもかかわらず「本当にノーマルより乗り心地がいい!!」でした。ただ、フワフワした乗り心地の良さではなく、シャキッとしているけど不快な感じがない、要するに“いなし”の効いた乗り心地です。
もう少し具体的に言うと、ギャップを乗り越えた時にノーマルは入力が「ドン」とダイレクトに伝わる上に、吸収は「シュッ」と時間軸が速いので、どこか揺さぶられ感が残るので硬さを感じますが、HIPERMAX Sが装着されたヴェルファイアでは入力は「トン」とオブラートに包まれたような優しさの上に、吸収は「スーッと」と少しだけ時間をかけて収まる印象です。つまり入力の伝わり方に過度な所がないのです。
バネレートもダンパーの減衰力もノーマルよりハード側の設定になっていますが、そのバランスが整っていることに加えて、偏平タイヤをシッカリ撓(たわ)ませることで初期入力をタイヤで吸収→その先はサスペンション側で吸収、といった連携がノーマル以上に上手にできていると分析できます。
要するに、乗り心地というのはバネ、ダンパーが柔らかければOKではなく、「タイヤをいかに味方に付けられるか」、「そのためにはバネ/ダンパーはどうあるべきか?」を考えた設定が重要で、それをHIPERMAX Sができている…と言うわけです。
もちろん、軽量な鍛造ホイールであるAVS MODEL F50のホイールと、プレミアムコンフォートタイヤのADVAN dBが良い仕事をしていることも付け加えておきましょう。
さて、乗り心地が良くなってもハンドリングが悪化したらスポーツサスとしてNGでしょう。しかし、そこに関してはHIPERMAX Sは抜かりなしと言うか、むしろ本領発揮の部分です。
一言で言うと、ノーマルよりも操作に対して意のままに動くのはもちろん、より自然、より素直に曲がってくれます。もう少し具体的に言うと、コーナリング時はステアリングを切り始めた瞬間からノーズがスッと素直にインを向くので旋回姿勢に持ち込みやすいのと、コーナリング姿勢もまるで重量配分が変わったかのように荷重を4つのタイヤに上手に振り分けてきれいに曲がる印象で、とにかくハンドルで曲げるのではなく、クルマ全体で旋回できている印象が強いと感じました。
このあたりもバネ/ダンパー/タイヤホイールのバランスによるものです。バネレートはフロントよりもリアのほうが高い値ですが、これによりリアの倒れ込みを抑えることで安定性が増したのと、クルマはよりハッキリ動くようになったことで、フロントもより旋回性に振った味付けにすることができたのでしょう。その結果、サスは「沈み込むけど粘りがある」のです。
筆者はノーマルのヴェルファイアを先代の「ミニバンの高級車」に対して「高級車のミニバン」と形容していますが、HIPERMAX Sの装着により「ドライビングプレジャーを備えた」というキーワードをプラスしたいくらいです。「この感覚、どこかで味わったことあるな?」と思い出すと、DIRECT4が搭載された現行型のレクサス「LM」にかなり近いな…と。
そろそろ結論に行きましょう。筆者は以前、HIPERMAX S/Rを装着したモデルに乗り、「サードパーティーのサスペンションで“乗り味”について語る時が来た」と驚きましたが、その一方で「あのフィーリングがミニバンでも成立するのか?」という心配があったのも事実です。
ただ、今回試乗してみて「ミニバンでもコンセプトが全くブレていない」ことがわかりました。一般的には「乗り心地ならアルファード」、「走りならヴェルファイア」と言われますが、HIPERMAX Sはどちらも妥協しないサスペンションに仕上がっているのは、筆者が保証しましょう。
ちなみにヴェルファイア用のHIPERMAX Sはアルファード用とは別設定ですが、具体的には「アルファード(FF)用」「ヴェルファイア(FF)用」「アルファード&ヴェルファイア(4WD)用」と分けられています。もちろんボディ補強の違い、車両重量の違いなどから「理想の仕様は別々」という考え方によるものだと思います。
ミニバンであっても「ブレないコンセプト」を実現させてしまうことこそが、HKSのHIPERMAX Sのポテンシャルの高さを証明しており、同時に新型アルヴェルの素性の良さも証明している…と言っていいかもしれません。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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