約28万円で「4人」乗れる!? 全長3.1mの「“4ドア”コンパクト」! 斬新過ぎる「超“無駄なし”仕様」がスゴイ! MTもある「ナノ」ってどんなクルマ?
10万ルピー(約28万円)という驚異的な価格で、インドで販売されていたタタ「ナノ」。どのようにしてその価格を実現していたのでしょうか。
バイクに代わる、「誰でも買えるクルマ」を作れ!
“価格が安い新車”と聞いてどのくらいの価格を想像するでしょうか。
参考までに、2024年7月現在の日本でもっとも安価なのは、スズキの軽トラック「キャリイ」の約75万円。乗用車ではダイハツの「ミライース」が約86万円で購入できます。複雑なパーツの集合体であるクルマは、どんなに装備を削っても、極端にリーズナブルな価格で販売するのは困難です。
ところが2008年、インドの自動車メーカー「タタ(タタ・モーターズ)」は、10万ルピー(当時のレートで約28万円)の小型車「ナノ(Nano)」を発表。“世界で一番安いクルマ“として、大きな反響を呼びました。
当時のインドではモータリゼーションが進み、2003年の自動車保有台数は約1000万台に達していましたが、人口1000人あたりでの台数で見ると約10台と低く、移動や輸送にはまだまだバイクが用いられていたのです。
そんな中、当時のタタ・モーターズ会長 ラタン・タタ氏は、クルマが普及していないために、バイクに家族4人が乗って移動するのが当たり前のような光景を見て「多くの人の手に届く価格で、安心・安全に移動できるクルマを作りたい」と考え、「10万ルピーカー」を構想しました。
当時インド国内最安値だったマルチ・スズキ「800」の価格は、スタンダードグレードでも約20万400ルピーだったため、「10万ルピーで販売できる乗用車は非現実的だ」とも言われていました。
しかしナノは、全長3.1m、全幅1.5mという小さい車体により、車両価格の大部分を占める鋼材の材料費を削減。ワイパーは1本で、ベーシックモデルでは助手席側ドアミラーやエアコンも省かれています。
給油口はボンネット内に置いて、給油キャップすら省略。ブレーキは4輪ともドラム式でした。パッと見るとハッチバックのように見えるスタイルですが、バックドアすらも持たないという徹底したコストダウンが図られていたのです。
いっぽうで車高は1.6mもあり、卵のようなワンモーションフォルムと長めのホイールベースにより車内空間を確保。4名が乗車可能でした。また、マルチ800より約2割広いと言われていました。
34psを発生する排気量623ccの2気筒エンジンは後部に搭載。4速マニュアルトランスミッションを組み合わせて、約600kgの車体を105km/hまで引っ張りました。燃費は20km/Lと発表されていました。
このように衝撃的な価格と戦略で大々的に発表されたナノ。販売店には客が殺到し、予約サイトでの申し込みも20万件を記録。
発表時には、ベーシックモデルでは構想通りの10万ルピーのプライスタグを掲げましたが、これは工場出荷価格のため、実際には輸送費や諸費用が加わって15万ルピーほど払う必要がありました。
グレードは3種類あり、エアコンやフォグランプを装備した上位モデルの価格は約25万ルピーに達しました。とはいえ、ナノのユーザーの約半数がこちらを選んでおり、ナノの優位性である価格よりも上級感を求めたようです。
販売開始は予定よりも半年ほど遅れてしまいましたが、その間に、原材料となる鋼材や石油製品の価格が上昇。ナノも値上げせざるを得ない状況となり、最安値で約11万ルピーに価格を変更することに。しかも、その後も値上げが続きました。
さらに追い討ちをかけるように、数度に及ぶ車両火災が発生。安全性の低さや、外観が安っぽく見えることもユーザーから悪印象を持たれる要因となり、年産25万台(初年度10万台)という目標に対し2009年は約3万台、2010年・2011年は7万台しか売れず、目標台数を大幅に下回りました。
「ナノを買うお金があれば、より上質なエアコン付きの中古車が買える」という声もあったそうです。
しかしタタもナノを諦めたわけではなく、天然ガス(CNG)を併用できる仕様や、スタイリッシュな上級グレード「ツイスト(Twist)」を追加するなどの地道な改良・販売を続けたこと、購入層に一定の評価が広まったことなどから、2012年頃には年間約7.5万台を販売。最多台数を記録しました。
2015年には、内外装をブラッシュアップした「Gen X ナノ」に発展。基本的なデザインを保ちつつも、いかにも安価なクルマという雰囲気を脱却し、電動パワーステアリングやオートマチック、そしてついにハッチバックボディも採用。上位モデルにはBluetoothラジオを搭載するなど装備も充実。
そのかわり価格は最廉価版で約20万ルピーに達し、もはや10万ルピーカーのコンセプトは失われていました。
このように大幅改良を行ったGen X ナノですが、販売成績は伸びずに2018年に生産を終了。革命的とも言えるコンセプトの小型車ナノは、後継車を持たずに姿を消しました。
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2023年現在のインドにおける自動車販売台数(四輪のみ)は、約600万台をマークしています。
そのためタタも、欧米・日本のクルマに負けないほどに優れたデザイン・性能を持つ小型車やSUVを多数ラインナップしており、ナノが登場した頃よりも大きくステップアップしました。
インドをはじめとしたアジア圏の自動車社会の発展ぶりには、驚かされるばかりです。
テレビ(放送局)もそうだが、外国のトピックスを、さも日本国内のニュースの様に報道するのは止めて欲しい。そこまでして「注目を集めたい」のかと思ってしまう。内容を見たら外国と解るので、問題無いという認識なのだろうが、それをされるたび見る気を失い、報道元(放送局)の信用がガタ落ちだ。