強制撤去のボロボロ「不法放置バス」その後どうなった? 川崎市の損害「158万円」差し押さえもできず!? 未曾有の「車両放置事件」の顛末は
2022年7月に、川崎市の臨海部である東扇島地区で、長期間にわたって放置されたままだった廃バスが、市の「行政代執行」により強制撤去されました。撤去の顛末について、市議会で報告が上がっています。
駐車場を「6台分」横向きにふさぐ
2022年7月に、川崎市の臨海部である東扇島地区で、長期間にわたって放置されたままだった廃バスが、市の「行政代執行」により強制撤去されました。
撤去されたバス車両は、そのあとどうなったのでしょうか。
「東扇島の不法放置バス」は、三菱ふそう製の大型観光バス車両「エアロクィーンI」です。
東扇島東公園の駐車場で2021年5月、公園を管理する職員が、放置されているバス車両を発見。駐車場の「6台分」をまるごと占拠していて、割れたガラスが散乱。公園利用者が停めたくてもバスが邪魔で停められない状況となりました。
のちの調査で、この時点ですでにバスは車検切れだったといいます。
川崎市はバスの持ち主を特定し、撤去を要請。しかし、バスの損傷状況をとらえて「市の管理不行き届きだ」「市が原状回復すべき」などと主張し、撤去に応じませんでした。
そうして2022年7月22日、ついに市は行政代執行を実施。約2時間で、廃バスは重機で搬出されていきました。
さて、その後の廃バスの顛末は、昨年8月の川崎市議会の環境委員会資料にて「東扇島東公園に放置された大型バスへの対応について」と題し、詳細に書かれています。
これによると、まず「バスを撤去したので、引き取りに来てください」という通知が送付されました。
同年11月になっても引き取りが無く、翌2023年5月に再度、市は引き取り通知を送付。しかし、期限である6月末になっても引き取りはありませんでした。
2023年1月に、市は中古車買取業者など28社あてに、この廃バスの買取見積もりを依頼。そのうち2社から「バスの価値は10万円」という評価は得たものの、引き取りについては、移動費用などで10万円を上回ってしまうということで断られたといいます。
そしてついに、2023年7月10日、この廃バスは「廃棄処分」となりました。このタイミングで処分した理由について、資料では「有価で引取可能とする事業者が(持ち主の他に)いないことから、保管費用がバスの価値(10万円)を上回る7月10日に廃棄処分」したと言います。
つまり、これ以上保管していると、保管費用を売却でペイできなくなり、市の予算に影響を及ぼすと計算された次期に差し掛かったというわけです。
なお、これまでに川崎市が払った費用は、行政代執行に37万738円、撤去後の保管費に10万184円、処分費に44万円。さらに駐車場代に相当する費用で66万7200円の損害が発生。あわせて「157万8122円」にのぼっています。
しかし、2022年10月から持ち主の財産調査を行った結果、「現状では支払い能力がない」と判明。差し押さえることもできず、「自主納付を求めて催告を実施する」「今後も財産調査を実施する」という対応しかできない状況だとしています。
その後、2024年7月時点で、目立った動きは報告されていません。
なんかやり逃げ・逃げ得みたいで、後味の悪い寸劇を見せつけられた感じです。
所有権絶対の原則は分かるが、放置家屋等の問題に通ずる法の不備ではないか。公序良俗の概念からこうした行為が「違法」として、公権力が個人の権限を制限できる新たな法整備が必要なのではなかろうか。