トヨタ高級車「新型クラウン」なぜ“4車種”も存在? しかも「SUVタイプ」が3車種!? 過去のイメージ覆す「革新と挑戦」の理由とは
「クラウン」を急浮上させた衝撃の戦略
そこで、導入されたのが、今回のシリーズ化だった――というわけです。

トヨタは新型クラウンの変化を以下のように説明します。
「戦後間もない時代に、初の独自開発で苦難を重ね高級車を作り上げた『革新と挑戦』のDNAは、その後67年に渡り歴代クラウンに受け継がれ、常に時代の一歩先を行く新しい価値を追求し、多くのお客様にご愛用いただいてきました。
しかし時代の変化はそれ以上のスピードで進み、多様化するお客様のニーズに対して十分お応えできなくなり、フラッグシップとしての存在感が希薄になっていきました。
今回、開発チームは、新しいクラウンの開発にあたり、『クラウンとは何か』を徹底的に見つめ直し、『これからの時代のクラウンらしさ』を追求した結果、4つの全く新しいクラウンを作り出しました」
このように、本来クラウンのDNAは「革新と挑戦」だったはずが、残念ながら時代の変化に後れを取ってしまいました。そこで「これからの時代のクラウンらしさ」を追求した結果、シリーズ化したという説明です。
実はこのようなシリーズ化はクラウンが最初ではありません。
先行したのは、「ヤリス」でした。トヨタは、2020年にコンパクトカーであるヤリスに、SUVタイプの「ヤリスクロス」を加えます。
そしてこのヤリスのシリーズ化が大ヒットを記録。なんとヤリスシリーズは、2020年から2023年まで4年連続で年間販売ランキング1位を獲得するほどに売れました。
しかもその販売の半数ほどが、ヤリスクロスで占められていたのです。
ヤリスは、SUV人気という世相に上手く乗って上手にベストセラーカーの地位を獲得したと言えるでしょう。
それに続きトヨタは、2021年に「カローラクロス」を発売。“虎の子”だったカローラでもシリーズ化を進めます。
そして2022年、ついにクラウンのSUVシリーズ第一弾となるクラウンクロスオーバーを発売し、さらに2023年にはセンチュリーのSUVタイプも発表。
ヤリスにカローラ、クラウンにセンチュリーというトヨタの歴史あるモデルを次々にシリーズ化しているのです。
そうしたシリーズ化の結果、クラウンはかつて無い急浮上を果たします。
クラウンの売れ行きは2023年において20位(43029台)、2024年1~5月では14位にまで上昇しました。さらに注目度は以前と比べものにならないほど高まっています。
このように、「クラウンらしさ」を「高級セダン」だと考えて矮小化するのではなく、一歩下がって「ボディ形状にとらわれない高級車」ととらえてシリーズ化させたのは、革新的で挑戦的なアイデアです。
まさにクラウンのDNAである“革新と挑戦”が、現在の成功を導いたと言えるでしょう。
Writer: 鈴木ケンイチ
1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するように、日々努力している。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。








































































