国産車「最大排気量」モデル! 6400ccの「V型8気筒エンジン」搭載! 全長6mオーバーの「超高級ニッサン車」が凄すぎる! 開発した理由とは
現在、国産乗用車が搭載するエンジンの排気量は大きくても5リッター級となっていますが、歴史を遡ると、6リッターを軽く上回る巨大なエンジンを搭載した乗用車も存在していました。一体どのようなモデルなのでしょうか。
国産最強の「超大型エンジン車」とは
現在、国産新車において乗用車が搭載するエンジンの中で大きな排気量といえば、トヨタ「センチュリー」やレクサス「LC」などの搭載する5リッターV型8気筒エンジンが最大となっており、つまり大排気量といえば5リッターや4リッター級のクルマが国内モデルでは当てはまります。
しかし、実は日本車の歴史において乗用車に搭載された最大の排気量は6リッターを軽く上回るもので、まさに規格外の巨大なエンジンでした。
そのとてつもなく大きなエンジンが搭載されたクルマとは、「プリンスロイヤル」。1967年(昭和42年)に宮内庁に納入されたリムジンです。
同車の開発・製造をおこなったのは、日産自動車と合併する前のプリンス自動車で、「プリンス・セダン」などを宮内庁に納入していた実績が高く評価され、宮内庁専用の超高級リムジン(御料車)を開発する役目に抜擢されました。
1965年には納入に先んじてプリンスロイヤルという車名が発表されますが、翌1966年4月にプリンスは日産に合併吸収され消滅。
そのため同車は“日産のプリンスロイヤル”という、メーカー名が重なる呼ばれ方となりました。
4ドアリムジンタイプのボディは全長6155mm×全幅2100mm×全高1770mm、ホイールベースは3880mmと、国産車の乗用車としては飛び抜けて大きなサイズを誇ります。
また車体自体が大きなことに加え、さまざまな装備や入念な防弾対策が施されており、重量は3200kgにも上りました。
フロントにはデュアルランプと格子状の大型グリルが鎮座しており、当時自動車先進国であったアメリカやヨーロッパの高級車にも引けを取らない、押し出しの強いデザインを採用。
全席にわたる革張りの内装はほとんどが手作りで、貴賓席である後部座席には最高級の毛織物が用いられています。
また、侍従用の補助席が設けられていたり、運転席に指示が出せるようにインターホンまで装備されているのも巨大な御料車ならではの特徴です。
キャビンを囲むガラスはすべて密封合わせガラスになっているため、静音性にも優れています。
このプリンスロイヤルに搭載されるエンジンは、同車専用開発された特別なV型8気筒OHVエンジンで、その排気量はなんと6.4リッター(6373cc)。
これは先述のように、国産の乗用車用エンジンとしては最大排気量となり、最高出力260馬力を発揮。これに3速ATのトランスミッションを組み合わせて後輪を駆動します。
そのほかブレーキ配管を二重構造化、燃料ポンプを2組搭載、電気系統も2系統備えるなど、可能な限りトラブルが起きないよう設計されているのも御料車ならではの特徴のひとつ。
さらにボディフレームに亜鉛メッキを用いて腐食を防ぐという工夫も取り入れられていました。
そんなプリンスロイヤルは計7台が製造され、このうち5台が宮内庁に納入。残り2台は大阪万博での来賓送迎用などに用いられたとされています。
また、宮内庁に納められた中の1台は、後に寝台仕様に改造され、1989年2月の大喪の礼で用いられました。
1967年の納入以降、メンテナンスを行いながら40年以上使用されたプリンスロイヤルですが、長い年月によって品質の維持と安全性の保証が難しくなり、2008年をもって勇退。
日産が次期御料車の納入を辞退したため、現在その役割はトヨタが開発した「センチュリーロイヤル」へと引き継がれています。
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プリンスロイヤルは、御料車としてわずか7台しか製造されず、また市販化もされなかったことから、一般人にはめったに見ることができない珍しいクルマでした。
引退後の現在は、昭和天皇記念館で1台のみ展示されています。
機会があれば、国産乗用車最大のエンジンを搭載する大型リムジンを見に行ってみてはいかがでしょうか。
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