トヨタが「新型ランクル」開発!? 全長5m超え“スポーティ3列SUV”登場か モノコック採用の斬新「Se」とは

2023年秋に世界初公開されたトヨタ「ランドクルーザーSe」とはどのようなモデルなのでしょうか。

「ランドクルーザーSe」とはどのようなモデル

 ランドクルーザーと言えばトヨタを代表するモデルで、複数のバリエーションをラインナップします。
 
 そのなかで現在開発を進めている「ランドクルーザーSe」とはどのようなモデルなのでしょうか。

「TOYOTA JMS PROLOGUE」で世界初公開された新型「ランドクルーザーSe」はモノコックボディ&BEVとなるようだ
「TOYOTA JMS PROLOGUE」で世界初公開された新型「ランドクルーザーSe」はモノコックボディ&BEVとなるようだ

 トヨタ「ランドクルーザー250」の登場によって、多様なユーザーニーズを満たすことに成功した「ランドクルーザー」シリーズ。

 高級路線の「300系」、マルチパーパスな「250系」、そして快適性も手に入れたヘビーデューティ系の「70系」という最強ラインナップが完成しました。

 しかし、トヨタはこれが完成形とは考えていないようです。

 250系のワールドプレミアが開催された時、会場では2台の250系の後ろにナゾの車両が映されました。

 1台はコンパクトモデル、そしてもう1台はジャパンモビリティショー2023において展示された「ランドクルーザーSe」です。

“Se”とはスポーツエレクトリックを意味する記号で、その名の通りバッテリー式EVです。

 おそらく多くのランクリストが、「ついにランクルにも電動化の波が来たか」とため息をついたのではないでしょうか。

 ランドクルーザーSeの詳細はあまりつまびらかにされていませんが、BEVであること以外にも衝撃的なトピックスがあります。

 それはランクルでありながら、モノコックボディだということです。

 開発スタッフが「シリーズで最もスポーティかつ新しいモデルを目指した」と語るように、これまでのランクルとは違った新基軸を採用したようです。

 モノコックボディと言えば、かつて市場のライバルだったランドローバーが、レンジローバーをベースにしたPHEVをすでに投入しており、HV、エンジン車と共にモノコックボディを採用しています。

 しかしランドローバーはかなり前から高級SUV路線に舵を切っており、現行型ディフェンダーもモノコックボディになったことで往年のファンを落胆させました。

 ディフェンダーはラダーフレーム時代に比べると1.5倍ものボディ強度を持ったと謳っていますが、これはあくまでもネジリ剛性などの話。

 障害物に直接車両下部がヒットした場合は、果たしてどうなるか分かりません。

 こうした可能性も含めて、ランクルは300系、250系でも従来通りのラダーフレーム構造を踏襲しています。

 250系ではHVが海外向けに設定されていますが、ここで考えなければいけないのは航続距離です。

 電力が乏しくなってもエンジンで走行充電できるHVとは異なり、BEVは蓄電された電力に頼るしかありません。

 特に充電施設のないような場所に出かける場合は、1回の満充電でどれだけ走り続けられるかがカギになります。

 そして十分な航続距離性能を確保するには、やはり車両重量がポイント。

 となると必然的に、軽いモノコックボディということになるのかもしれません。

 ちなみに別の開発担当者によると、ランドクルーザーSeは航続距離約700kmを目指して言い、これが実現できれば北米やロシア、中国、中東といった主要な市場でも実用的に使える車両になります。

 ちなみに、ランクルシリーズのチーフエンジアである森津圭太氏にボディ構造について聞いたところ、こんな答えが返ってきました。

「モノコックボディについては、ユーザーさんから不安の声も聞こえてきそうですが、そこはやはりランクルブランドを冠しておりますので、ご期待していただきたいと思います。“どこにでも行けて、生きて帰ってこられる”という命題は、BEVになっても変わりません」

 ちなみに、BEVになることは不安要素ばかりではありません。

 ポジティブな部分を挙げるのであれば、悪路走破性の大幅な向上です。

 ランドクルーザーSeの場合、前後車軸上にそれぞれ1個ずつのモーターを配置するデュアルモーター式4WDが予想されます。

 このシステムは、従来のようにプロペラシャフトを介さずに四輪駆動を実現するため、駆動力損失が大幅に減らせます。

 またモーターは電力が流れた直後から最大トルクを発生できるだけでなく、各輪の駆動トルク制御が内燃機関のクルマよりも容易です。

 ランドクルーザーと言えば、「マルチテレインセレクト」が特徴的なメカニズムですが、さらに瞬発的かつデリケートな駆動トルク制御が可能になることでしょう。

 これは、三菱「アウトランダーPHEV」が実証済みです。

 とは言え、やはり気になるのは信頼性と耐久性です。

 ランクルと言えば、半世紀近く現役という個体も少なくなく、海外では化石状態になっても活躍しているランクルがたくさん存在しています。

 それはひとえに、ボディオンフレーム構造で、しかも電子部品がほとんどなかったからです。

 これについて、前述の森津氏は絶対的に自信を見せながらも、ある部分では含みを持たせた発言をしています。

「信頼性や耐久性については、ランクルである以上は十分なスペックを確保できるように開発中ですが、販売地域についてはまだ決まっておりません」

 つまりランドクルーザーSeは、道路や充電インフラが十分に整備された地域でのみ販売される可能性があるということです。

 ちなみに発表されたスペックを改めて見てみると、全長5150mm×全幅1990mm×全高1705mmで、全高こそ低い数値になっているもの、300系よりも大柄な車体です。

 3列シートのSUVを謳っていますが、3列目もそれなり余裕がある居住スペースになりそうです。

 しかしランドクルーザーSeはあくまでもコンセプトモデルであり、あのカタチのまま発売されることはありません。

 おそらく、従来のブランド性を継承しながらも、新しい価値を持ったモデルを将来的に出すよという予告のようです。

 数年内に登場かというような報道もありますが、実際の開発スケジュールを考えれば、当分先の話になるのではないでしょうか。

 現在の市場では、2.5トンもの車重となっているがゆえに300系を敬遠するユーザーもいるようですから、大幅な軽量化によってスタビリティが劇的に進化すれば、新しいユーザー層が生まれる可能性も出てきます。

 一方で、ランクルの伝統的なタフネスというイメージから路線がズレることで、従来のファンからのブーイングも聞こえてきそうです。

 ちなみに、プラド系の源流である「70ワゴン」が発売された際、シャシはハイラックス系を流用して、四輪コイルリジッド式サスペンションであったことから、当時のランクリストからは大きな批判が生まれました。

 しかし、このモデルはプラドの系譜となり、そして現行型の250系として繋がっています。

 新しいものはとかく批判されがちですが、いずれはすべてのランドクルーザーがモノコックボディでBEVという時代が来るのかもしれません。

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Writer: 山崎友貴

自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。

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