2024年全日本ラリー第2戦「ツール・ド・九州 in 唐津」リポート! 新井/松尾組が駆るシュコダ・ファビアR5がワークスチームに立ち向かう!
2024年全日本ラリー第2戦ツール・ド・九州 in 唐津が、2024年4月12日から14日にかけて佐賀県唐津市を中心に開催されました。
第2戦はギャラリーや関係者の人気も高い「ツール・ド・九州 in 唐津」
2024年全日本ラリー第2戦ツール・ド・九州 in 唐津が、2024年4月12日から14日にかけて佐賀県唐津市を中心に開催されました。
唐津は博多の中心街から1時間半という立地や、虹の松原や唐津城といった観光地に加えて、呼子(よぶこ)のイカや唐津バーガー、ちゃんぽんなどのグルメも楽しめるとあって、ギャラリーはもちろん関係者にも人気の高いラリーです。
競技区間であるSS(スペシャルステージ)とSSの間を公道を使って移動する区間「リエゾン」で唐津市中心街を通過するので、観光客も興味津々です。タイミングが合えば桜とラリー車の組み合わせも楽しめますが、今年は桜の開花の方が早かったようです。
長年、開幕戦として開催されていましたが最近は第2戦として開催されることが多いターマックラリー。三河湾と比較するとスムースな路面で、本州ではあまり見られない、奥に行けば行くほど回り込むようなコーナーが多いのが特徴的です。
奴田原・東組のGRヤリスRally2のSS1は痛いデイリタイア
土曜朝にスタートしたラリーはいきなり波乱の展開。SS1で唐津とは相性のいい奴田原文雄・東駿吾組のGRヤリスRally2がスタートから約1キロでコースオフしてしまいました。幸いにもダメージは軽く日曜は出走することができましたが、痛いデイリタイアとなりました。
SS1を制したのは新井大輝・松尾俊亮組のシュコダ・ファビアR5。10.38キロのSS1で2位の福永修・齊田美早子組のシュコダ・ファビアRally2に11.5秒もの差をつけ幸先のいいスタートです。
ラリー三河湾を制した勝田範彦・木村裕介組のGRヤリスRally2は、事前テストからトラブルを抱え、SS1を4位で終えますが徐々に速さを取り戻し、Leg1を2位で終えました。一方、新井・松尾組は絶好調で、Leg1の全てのステージでベストタイムを記録しました。
前戦の「ラリー三河湾」でのミッショントラブルも見事クリア
新井・松尾組のファビアR5はR規定が始まった当初にシュコダ・モータースポーツからロールアウト。世界中の数々の有力チームを渡り歩き、多くのシリーズチャンピオンを獲得した実績のあるクルマですが、いわゆる「低年式車」ともいえます。
R車両のミッション、タービンなど数多くの消耗部品はそれぞれの耐用距離数が定められていて定期的に交換されるので、低年式=過走行という一般車での考え方は決して当てはまりませんが、最新の車両と比べるとスペックの差は明らかです。
また、部品交換やオーバーホールをどこまで実施するかはチームの予算によるところが大きいので、車両本体はもちろん、部品も高価なR5・Rally2車両で参戦するプライベートチームは予算の制約が常につきまといます。
新井・松尾組のファビアR5は、前戦の「ラリー三河湾」でミッションにトラブルを抱えてしまいましたが、唐津に向けて限りある予算から程度のいい中古ミッションに換装。その効果が早くもリザルトに現れました。
若いプライベーターがワークスチームに立ち向かう姿は胸熱!
Leg2でも新井・松尾組は好調です。今回新井選手と初めてコンビを組む松尾選手は全日本ラリー初参戦です。これまでは群馬県シリーズを中心に参戦していて、初めての全日本ラリーがいきなりの最高峰クラスとなりました。けれど、緊張感はあまり見られず普段通り淡々とコドライバーをこなしているように見えました。
またチームスタッフも若く、サービスを担当するメカニックはなんと全員学生! 全日本ラリーに参戦しているチームのメカニックは、選手と同様に超ベテランぞろいです。海外での経験が豊かなメカニックも多く、経験がモノをいうラリーではそういったベテランメカニックの力が大きな武器となります。
そんな中、若いチームが膨大な予算と豊富な人材、最新スペックのマシンをそろえたワークスチームに立ち向かうなんて、見てる方も熱くならないはずがありません。とにかくクルマを壊せない新井・松尾組は、2位に浮上した勝田・木村組とのタイム差を考えながらペースをコントロール。勝田・木村組に40.4秒差をつけて新井選手は2020年以来の総合優勝、松尾選手にとっては全日本初参戦で初優勝を飾りました。
さまざまなハンディを負いつつも、2日間通してラリーをコントロールした新井・松尾組。フィニッシュ後に新井選手は「タイム差を築けたので次戦に向けてテストができました」と語っていました。
唐津から2週間のインターバルで第3戦久万高原ラリー、そこからまた2週間で第4戦ラリー丹後と、厳しい日程が続くことになります。もしもクルマにダメージを負うと時間的な余裕はほとんどありません。
そのため、久万高原をスキップするチームも見られます。海外修行時代も含めるとR5・Rally2車両の経験はいちばん豊富と言ってもいい新井選手は、プライベーターとしてのハンディはあるものの、タイトル獲得への意気込みも見せてくれました。
JN2クラスでは、唯一WRX STIで参戦している三枝聖弥・船木一祥組が優勝
今回もうひとつ注目したいのが、経験豊かなベテラン選手が活躍するJN1クラスのひとつ下、GRヤリスやWRX STIなどのナンバー付き車両で競われるJN2クラスで、若い選手が多く活躍しているのが特徴です。
参戦車両のほとんどがGRヤリスの中、唯一WRX STIで参戦しているのが三枝聖弥・船木一祥組です。
三枝選手はダートトライアルドライバーの父の影響もあり、免許取得後はダートトライアルに参戦。2020年にラリーに転向し、中部近畿選手権に参戦します。経験豊かなベテランコ・ドライバーとコンビを組み経験を重ね、2022年から全日本ラリー最高峰クラスであるJN1クラスに参戦を開始しました。2023年からはJN2クラスに参戦し、速さは見せるも勝利にはなかなかつながりませんでした。
唐津ではSS1から3連続ステージベストを獲得し、Leg1をクラス首位で折り返しました。Leg2はペースをコントロールする余裕も見せ、ラリーを通じて一度もクラス首位を譲らず、うれしい全日本ラリー初優勝を飾りました。
軽さを武器にGRヤリスの進化が進み、重量的にハンディがあるWRX STIですが、三枝・船木組が戦闘力はまだ健在ということを示してくれました。三枝をはじめ、多くの若い選手が活躍するJN2クラスにもぜひ注目してみてください。
次節、久万高原ラリーは四国カルストのダイナミックな地形を走る名物ステージ「大川嶺」が復活
第3戦久万高原ラリーは2024年4月26日から28日にかけて、愛媛県の久万高原町を中心に開催されるターマックラリーです。
崖崩れのためにここ数年は使えなかった、四国カルストのダイナミックな地形を走る名物ステージ「大川嶺」が復活します。
久万高原町は松山市街から約1時間の距離なので、松山観光とラリー観戦を組み合わせるのがおすすめです!
[Text/Photo:山本佳吾]
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