ホンダの「軽商用バン」なぜ独自路線? ほぼダイハツ・スズキの独占なのに… 斬新すぎる「N-VAN」何がスゴい?
ビジネスのみならず個人ユースでも人気の「軽商用バン」は、ダイハツとスズキが他社にOEM供給するケースがほとんどです。そんななかホンダだけが「N-VAN」を独自に開発して販売しているのですが、どのような特徴があるのでしょうか。
トヨタの「軽バン」実はダイハツ製!? OEMの現状
小回り性能の良さと高い積載性、そして維持費も安いということで、軽自動車のワンボックスバン、いわゆる「軽商用バン(軽バン)」はビジネスユーザーに高い人気を誇っています。
その一方、近年はビジネスユースだけでなく、趣味の相棒として一般ユーザーからも人気を集めています。
そんな軽バンですが現在は、ダイハツ「ハイゼット」、トヨタ「ピクシスバン」、スバル「サンバー」、スズキ「エブリイ」、日産「クリッパー」、三菱「ミニキャブ」、マツダ「スクラム」、ホンダ「N-VAN」と各メーカーがラインナップしていますが、実質的には数車種しかありません。
ダイハツ、トヨタ、スバルはハイゼットがベース、スズキ、日産、三菱、マツダはエブリイがベースのOEMモデルとなっているのです(ただし三菱「ミニキャブEV」は三菱製で、日産「クリッパーEV」はそのOEMモデル)。
ほとんどのメーカーがダイハツとスズキからOEM供給を受けているのに対し、ホンダのみ完全自社開発・生産でN-VANを販売。他メーカーからのOEM供給も他メーカーへのOEM供給もしていません。
OEMという点では、ホンダは過去にいすゞと相互OEM供給をしていた時期があり、ホンダからは「アコード」(いすゞ「アスカ」)や「ドマーニ」(いすゞ「ジェミニ」)を、いすゞからは「ミュー」(ホンダ「ジャズ」)や「ビッグホーン」(ホンダ「ホライゾン」)をOEM供給しあっていましたが、軽自動車については現在に至るまでOEM供給を“する”ことも“された”こともないのです。
その理由としてホンダは「現時点でその必要がないため」と過去に回答しています。
しかし、実はホンダ初の四輪車は軽トラックの「T360」であり、その流れを汲んだ「アクティバン」(1979年デビュー)も他社の軽バンとは異なるド・ディオンアクスル式のリアサスペンションやアンダーフロアへのエンジン搭載など、こだわりが満載のモデルを展開していたのです。
このメカニズムは2018年に販売終了となった最終型のアクティバンにまで継続して採用され続けていました。
そうしたこともあってかN-VANも、他社の軽バンのように後輪駆動ではなく、軽乗用車の「N-BOX」のメカニズムを流用した前輪駆動車という独自性を持ったモデルとなりました。
このレイアウトによって荷室の全長は他メーカーの軽バンよりも短くなっているというデメリットもあるのですが、その一方で、前輪駆動の特徴を生かした低い荷室床面高や、助手席までもが完全にフラットになるシートアレンジ、そして助手席側のBピラーをドアに埋め込むことで大開口部を実現。
他メーカーの軽バンにはない特色を持たせることができ、ここでもホンダの独自性が遺憾なく発揮されています。
さらに2024年春にはEV仕様の「N-VAN e:」の登場が控えているほか、交換式バッテリーを用いたN-VANベースの軽EVである「MEV-VAN」をヤマト運輸と共同で実証実験をスタートするなど、より先を見据えた取り組みにも余念がありません。
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独自路線を突き進むホンダでしたが、2024年3月15日に日産との戦略的パートナーシップの検討を開始する覚書を締結したとアナウンスしました。
自動車車載ソフトウェアプラットフォームやバッテリーEVに関するコアコンポーネント、商品の相互補完などを検討するということで、今後は日産とホンダでOEM供給が始まる可能性もありそうです。
Writer: 小鮒康一
1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後になりゆきでフリーランスライターに転向という異色の経歴の持ち主。中古車販売店に勤務していた経験も活かし、国産旧車を中心にマニアックな視点での記事を得意とする。現行車へのチェックも欠かさず活動中。
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