迷惑な「放置車両」なぜ各地で多発? 9割が「意図的に放置」 過去には大型バスも!? 勝手に処分出来ない事情とは
自治体が運営する駐車場に放置車両が多い理由は?
―― 放置車両の所有者の許可が出ないと動かせないということですか。撤去までには相当高いハードルのように思えます。
車両の所有者と連絡がついて移動、撤去の許可がない限りは動かせません。
しかし弊社の場合、車両所有者との接触成功率は極めて高く依頼を受けた多くの車両に関し合法的な方法で撤去に成功しています。
そして、撤去費用に関してもよほど特殊な機器を使った作業や車内残留物が大量で処理に費用が掛かる場合を除いて原則は依頼者の負担は無料でやっています。
車内の残置物や一般ごみ以外の物が多い場合は処分費用を頂く場合があります。
2023年7月に水戸市内の有料駐車場で放置車両を撤去した際には残置物の処分費用として8800円を頂きました。
―― 放置車両が多い有料駐車場はどんなタイプの駐車場ですか。
駐車場にもいろいろなタイプがありますが、最も多いのは『ゲート式』です。
駐車場に入るときに駐車券を取って、出るときに出口ゲートにある精算機で精算するとゲートがあがって外に出るタイプです。
ゲート式以外では日々、料金データなどが管理会社に送られるのですが、ゲート式ではいったん駐車場内に入庫すると長期駐車かどうかがわかりにくい状態になります。
駐車場と管理会社が近い位置にあれば日々の巡回などで長期駐車している不審なクルマに気づくこともあると思いますが、距離的に離れている場合は数年放置ということもありうるのです。
―― 自治体が運営する駐車場に放置車両が多いとのことでしたが理由はどんなことですか。
基本的に放置車両の撤去は事情を知らない人がやろうとすると手続きがとても面倒です。
自治体の担当者にとっては、これまで放置車両の撤去作業を経験したことがない人が多く、申請書の作成から始めなくてはいけません。
面倒な手続きをして放置車両を撤去させたところでその人の評価が上がるわけでも報酬が上がるわけでもない(苦笑)。
だから、そのまま放置されるケースが多いです。ただ、メディアが取り上げるなどして情報が広まってしまった場合は撤去せざるを得なくなります。
―― ところで吉川さんの会社では車両撤去を依頼してきた人の負担が基本ゼロ円ということですが、なぜそんなことが可能なのでしょうか。
弊社では月に80-120台の放置車両を撤去しています。
本社は北九州市にありますが、全国に対応しており出張料なども無料です。
自動車所有者を調査し、所有者にアプローチし撤去を行う、この業務に対して、依頼者(土地の権利者)様からの対価(お金)を得ることを生業とする行為が『弁護士法違反』に該当する恐れがあるため、そもそも請求することができないのです。
では『どうやって利益を出すのか』ですが、これはリサイクルに関わる費用を頂くことで賄っています。
車両は、解体、破砕を経て、再度鉄に生まれ変わるという工程、つまりリサイクルとなります。
その工程で発生する一部の利益をいただいているのですが、まあせいぜい数万円です。10万円を超えることは滅多にありません。薄利多売です。
※ ※ ※
ところで、気になるのは有料駐車場における積もり積もった駐車料金です。
数年間の放置で駐車料金が100万円近い金額になることもあります。
気になるのは「誰が支払うのか」です。
これまで放置車両撤去を行った複数の駐車場経営者に聞いたところ、ケースバイケースのようでした。
所有者に支払いを求めて裁判を起こす場合もありますが、1日も早く駐車場として稼働させることを最優先して駐車料金を大幅に減額することもあるとのことでした。
ナンバープレートを外しても車台番号などから所有者の特定は簡単にできます。
クルマを放置すると周囲に多大な迷惑をかけることになり多額の費用を請求される可能性もあります。
処分に困ったらクルマを放置するのではなく、良質な買取業者に依頼すれば無料で廃車にできるだけではなく、場合によっては価格がついてプラスになる場合もあります。
Writer: 加藤久美子
山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。
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