“軽”全盛の時代に「コンパクトカー」は必要? 安全性? 燃費? 実はめちゃ“メリット”多かった? 押され気味の小型車をあえて選ぶ理由とは

まだある「コンパクトカー」を選ぶ理由

 また、コンパクトカーは、エンジン排気量が軽に比べて大きいため、パワーの余裕も十分。高速道路や山道、坂道では、やはり軽は物足りないと感じる人がいるはず。

 さらにコンパクトカーは、日本だけでなく、速度域の高い欧州地域でも販売される車種もあり、そうした車種は大抵、優れた操安性能を備えています。一方、軽は背の高い箱型ボディが流行したため、多くのクルマが重心の高い、走りに向かないフォルムをしています。

マイナーチェンジしたホンダ新型「フィット」(画像はフィットRS)
マイナーチェンジしたホンダ新型「フィット」(画像はフィットRS)

 そして走行性能に大きな影響を与えるタイヤのサイズが異なります。軽は13~14インチが主流。「N-BOX」でいえば155/65R14インチが中心です。一方、コンパクトカーは「フィット」で185/60R15です。

「N-BOX」の155という数字は、タイヤの幅が155mmであることを意味します。それに対して「フィット」は185mm。タイヤ幅が1.2倍も違います。タイヤの性能差という土台の部分で、コンパクトカーは軽よりも有利なのです。

 さらにコンパクトカーは、軽よりも選択肢が広いというのも魅力です。先に挙げた3列シートのコンパクトなミニバンもありますし、ホンダ「WR-V」のようなコンパクトSUVもあります。フルハイブリッドもコンパクトカーならではのもの。そして輸入車を選べるのもコンパクトカーの利点のひとつでしょう。

 そして最後のコンパクトカー選択の理由は、軽の黄色いナンバーへの忌避でしょう。存在を強く主張する黄色いナンバーよりも、白ナンバーの方がボディカラーとの調和も上。ですから、東京オリンピックやラグビーワールドカップなどを契機に導入された図柄入りや白地のナンバーは高い人気を集めました。

 冷静に考えれば、コンパクトカーを選ぶ理由は、意外にも多いことが分かります。確かに、維持費というコストだけを考えれば軽を選ぶのが合理的でしょう。しかし、クルマは経済性だけで選ばれるものではありません。

 クルマは、人それぞれ異なる生活を支える大きな柱になります。さらには個人のパーソナリティを示す存在ともなっています。当然、ユーザー側のニーズは非常に多彩です。それを経済性というひとつの物差しで測ることはできません。

 売れる数が少なくても、それを求める人は確実に存在するのです。だからこそ自動車メーカーは、数が少なくとも、スポーツカーを作り続けています。

 ユーザーも、「安い」だけのクルマしか提示されなければ、クルマを買おうという気にもならないはず。それこそクルマ離れになります。

 魅力的なコンパクトカーの存在することは、ユーザー側からすれば多彩な選択肢が存在することを意味します。自由で豊かな生活のために、コンパクトカーは、なくてはならない存在といえるでしょう。

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Writer: 鈴木ケンイチ

1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するように、日々努力している。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。

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