9年ぶりにトヨタ「ランクル70」復活! 一度は廃止された「本格四駆」なぜ国内市場で続々再販されるのか?

トヨタの本格四駆「ランドクルーザー70」が9年ぶりに国内で発売されました。三菱「トライトン」も復活するのですが、悪路に強いモデルが次々と再投入されるのはなぜなのでしょうか。

「ランクル70」「トライトン」が国内復活した理由とは?

 トヨタは「ランドクルーザー70(以下、ランクル70)」を11月29日に発売しました。
 
 ランクル70シリーズは、業務用途や過酷な環境での使用を主体とするヘビーデューティーモデルとして1984年に誕生。
 
 日本では2004年まで20年間にわたって販売が続けられましたが、その後は海外専用車になりました。

9年ぶりに復活を遂げたトヨタ新型「ランドクルーザー70」
9年ぶりに復活を遂げたトヨタ新型「ランドクルーザー70」

 そして、2014年8月に「2015年6月30日の生産分まで」という条件付きで一時的に国内販売を再開。これ以降は再び海外専用車となり、9年ぶりに2023年11月に再度国内で復活したのです。

 今になってランクル70が復活した理由は、大きく分けて2つあり、まずは同車が根強い人気に支えられていることが挙げられます。

 SUVは売れ筋のカテゴリですが、その多くはトヨタ「ハリアー」やマツダ「CX-5」のような乗用車のプラットフォームを使ったシティ派SUVです。

 そしてシティ派が急増した結果、最近はSUVの原点回帰として、悪路向けのランクルが注目されるようになりました。特に70シリーズは悪路指向が強く、軽/小型車の本格四駆であるスズキ「ジムニー/ジムニーシエラ」も人気となっています。

 そしてランクル70は中古車価格も高まっており、2014年に復活したバン仕様の新車価格は360万円でしたが、中古車価格は400万円から450万円が中心です。そこで新型モデルの国内販売を再開したという事情があります。

 2つ目の理由は、ランクル70が改良を受け、国内販売が可能になったことです。

 エンジンは2.8リッター直列4気筒クリーンディーゼルターボになり、昨今のクルマに装着が義務となっている横滑り防止装置や衝突被害軽減ブレーキなども標準搭載。法規にも対応しているので、継続的な国内販売が可能になりました。

 ただし4WDは、前後輪の回転数を調節できないパートタイム式ですから、舗装路は後輪駆動の2WDで走行します。

 悪路走行に特化したモデルなので万人向けではなく、悪路を走る機会が少ないユーザーではその真価を発揮できないこともかもしれません。

 実は三菱も、悪路に強いモデルを国内復活させます。それが「トライトン」で、ダブルキャブのピックアップトラックです。

 先代トライトンはタイで生産され、2006年に輸入販売を開始。しかし1か月平均登録台数は30台から40台に留まり、2011年に国内販売を終えました。

 新型トライトンも引き続きタイ生産とし、日本へ輸入されることになります。

 トライトンも今になって輸入販売を再開する理由はいくつかあり、ランクル70の復活と事情が似ています。まずはSUV市場の変化です。

 ランクル70の復活で述べた通り、今は悪路向けのSUVが注目されています。三菱はかつて本格的な悪路向けの「パジェロ」を設定していましたが、現在は終了。そのため、トライトンを改めて輸入する事情があります。

 ピックアップトラックの市場環境も変化しており、トヨタ「ハイラックス」は1か月平均で約1000台登録されています。そこでトライトンも、今なら売れ行きを増やす可能性があると判断されました。

 もうひとつの理由はトライトンが商品力を高めたことです。ランクル70やハイラックスの4WDは前述のパートタイム式ですが、トライトンはセンターデフを備えたフルタイム式です。

 4WDに前後輪の回転数を調節できる機能が備わり、舗装路でも4WDの状態で走行できます。

 4WDなどの制御を走行状態に応じて変更するドライブモードも備わり、機能を充実させました。SUVの競争が激しい国内市場に適する機能を備えることも、トライトンの輸入を再開する理由なのです。

※ ※ ※

 悪路向けのSUVは、以前は「日本では走る場所がない」と言われて人気を下げましたが、今になって悪路に絞り込んだ硬派なクルマ造りとデザインが人気を集めています。

 車種の復活にはそれぞれ理由がありますが、共通しているのは市場環境が変化したり、商品の捉え方が変わってきていることにより、懐かしいモデルが再販されることが増えているのです。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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