商用車の絶対王者「ハイエース」なぜ大人気? 次期型は4ナンバー継続か!? トヨタの「商用バン」が魅力的すぎる訳
次期ハイエースはどうなる?
ハイエースが人気を高めた背景には、同じトヨタが用意する小型商用バン「タウンエースバン」の衰退もあるでしょう。
販売店では「今は軽商用バンの荷室が広がり、タウンエースバンに近付きました。そのためにタウンエースバンは需要を奪われています。またインドネシア製を輸入するため、コロナ禍の前から納期が長引きやすかったです」と述べています。
タウンエースバンの荷室長は2045mmですから、ハイエースの3000mmに比べて約1m短く、ハイゼットカーゴの1915mmに近いです。そうなると商用バンのニーズは「ハイエースか、軽商用バンか」に絞られそうです。このことは先に述べた販売台数にも表われています。
そしてハイエースが人気を得た背景には、高値で売却できる事情もあります。
中古車の買取店は以下のように説明しました。
「ハイエースは耐久性が優れているため、海外市場でも人気が高く、中古車を輸出するバイヤーも注目しています。乗用車では価格が付かないような低年式の走行距離が伸びた車両でも、ハイエースであれば流通価値が残っています」
要は、ハイエースはビジネスで長く使っても、資産としての価値が残るのです。複数の車両を使う企業がハイエースをそろえれば、万一の時に数台を売却して、運転資金に充当することも可能でしょう。
高い売却額は、通常の乗り替えも含めて、複数の車両を所有する企業にとって大きな付加価値になります。
なお今はハイエースの受注が停止しており、販売店では以下のように述べています。
「ハイエースの受注が停止した時は、フルモデルチェンジかと思いましたが、実際には安全装備などの法規対応を目的にした改良です。
受注はすでに3~4か月停止しており、2023年12月から2024年1月頃に受注を再開して、改良版が発売されるようです。
ハイエースがボンネットを装着した海外仕様に切り替わる噂もありますが、それはないでしょう。ボディが過剰に大きくなるからです」
ハイエースの販売総数の内、70%程度は全長4695mm×全幅を1695mmに抑えた4ナンバー車になるとのこと。
このサイズで3000mmの荷室長を確保したことが人気の秘訣で、荷物をタップリと積めて、ボディは4ナンバーサイズに収まり、最小回転半径も5mだから街中でも運転しやすいです。
そのハイエースにボンネットを加えてエンジンを収めると、全長が大幅に拡大されます。海外版のボンネットを備えたハイエースでは、荷室長が2910mmのタイプは、全長が5265mmに達するのです。
つまりボンネットのない4ナンバーサイズの国内仕様のハイエースに比べると、荷室長は90mm短く、全長は570mm長いです。
海外版は全幅もワイドですから、倉庫の中での荷物の積み降ろしなどにも不都合が生じる場合があります。そうなると日本の流通や運搬のインフラにとって、4ナンバーサイズのハイエースは不可欠です。
これからもハイエースは、ボディサイズやデザインは大きく変えず、しかしパワーユニットや安全性は着実に進化していくでしょう。
特に人手不足などによって日本の物流が危ぶまれる今日、進化するハイエースの果たす役割はきわめて大きいです。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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