なぜスズキとダイハツが「軽トラ活用」で手を組んだ? 農業の課題解決で共同プロジェクトを展開する理由

スズキとダイハツが縮小傾向の軽トラ市場で目指すべきものとは

 このように、今回の実証試験は、スズキとダイハツが農村地域で現場を声をしっかり捉えようとするプロジェクトであり、現時点ではハードウエアである軽トラ自体を共同開発するといった大きな捉え方ではないようです。

 ただし、軽トラ市場全体を見渡してみれば、市場規模は縮小傾向にあり、軽トラ市場を今後も継続させるためには「次の一手」が必要にも思えます。

 一般社団法人 日本自動車会議所によれば、2022年の軽トラック総販売台数は約17万台。

 ピークだった1983年の約43万台と比べると約4割まで大きく落ち込んでいる状況です。

 最近はアメリカで日本からの並行中古車が大ブレイクして、農作業、またバイクなどの運搬用など様々な用途で使われています。

 しかしこれはスズキやダイハツが積極的に仕掛けた市場の流れではありません。一時的なブームで終わってしまうかもしれません。

 また、現地での需要があるとしても、新車を販売するとなると法規制を含めてメーカーとしては技術的なハードルもあるでしょう。

 そのため、やはり軽トラは当面、「ほぼ日本市場専用」という位置付けが続くように感じます。

 また、トヨタ、いすゞ、日野ととも、スズキとダイハツも参画する、CJTP(コマーシャル・ジャパン・テクノロジー・パートナーシップ)において、物流分野ではコネクテッド技術などデータを活用した共同配送の議論が進んでいるところです。

一方でスズキ、ダイハツ、トヨタでは、3社で共同開発してきたBEVシステムを搭載した商用軽バン電気自動車を2023年度内に発売する
一方でスズキ、ダイハツ、トヨタでは、3社で共同開発してきたBEVシステムを搭載した商用軽バン電気自動車を2023年度内に発売する

 農業、林業、漁業、畜産業など、一次産業においても、顧客サービスの視点から軽トラックメーカーであるスズキとダイハツがさらなる連携を検討することもあり得るはずです。

 そうした中で、将来的にはEV用電池の共通化など、技術的な協調領域が広がることも考えられます。

 日本発の小型多目的車である、軽トラ。

 その未来に向けて、スズキとダイハツ両社での議論がさらに深まることを期待したいと思います。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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1件のコメント

  1. スズキとダイハツは、ライバルでもあり、協業メーカ-でもありますよ
    過去排ガス規制でスズキの軽4輪用2サイクルエンジンが販売できなくなった時、一時的にダイハツからエンジン供給してます。

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