日産の「軽EV」なぜ爆売れした? 日本市場に“ドンピシャ”!?「サクラ」が異例のヒットとなった訳
「軽×EV」の親和性が高い理由とは?
軽自動車のサクラは、1回の充電で走行できる距離が短い、価格が高い、充電設備を設置しにくいといったEVの欠点に対応していることも特徴です。
まず1回の充電で走行できる距離ですが、軽自動車ではそもそも長距離を走る必要はありません。軽自動車は生活の足として、公共の交通機関が未発達な地域や中心に街中で使われるのがメインで、軽自動車を所有するユーザーはほかの車両も持っていることが多いからです。
長距離を走る時は、ファーストカーの普通乗用車を使うため、セカンドカーである軽自動車には長い距離を走ることは求められません。
サクラのリチウムイオン電池容量は20kWhで、リーフの40kWh/60kWhに比べると大幅に少ないです。1回の充電で走行できる距離も180km(WLTCモード)ですが、街中を移動するための軽自動車なら問題ありません。
3ナンバー車のリーフだと走行距離が問われますが、サクラは違います。そして街中の移動では、ボディは小さい方が好ましく、軽自動車のサクラはピッタリです。
そしてリチウムイオン電池が小さいサクラは価格も安いです。「X」の価格は254万8700円で、リーフ「X」の408万1000円に比べると6割程度に抑えました。
経済産業省による補助金額はサクラの場合55万円ですから、Xの価格から差し引くと約200万円です。
この金額は日産の軽スーパーハイトワゴンの「ルークス ハイウェイスターX」など普通の軽自動車の価格に近いため、N-BOX、タント、スペーシアなど他社の軽自動車からサクラへの乗り替えも進みました。この効果でサクラの売れ行きが増えました。
さらに、軽自動車は、複数の車両を使う一戸建ての世帯で使われることが多いため、ユーザーが自宅に充電設備を設置しやすいです。このように軽自動車とEVは親和性がとても高く、サクラの販売も好調というわけです。
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昨今の国内市場は、ハイブリッドが中心でEVに冷淡な印象も受けますが、これから軽EVのラインナップが増えれば売れ行きも伸ばせるでしょう。
言い換えれば、今まで日本でEVの売れ行きが伸び悩んだのは、海外向けの車種を投入したからで、EVはエンジン車以上に使われ方がデリケートですから、国内市場にピッタリ合った商品が求められます。それがサクラのような軽自動車だったのです。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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