なぜ回す? 大人4人で道路標識をくるり方向転換 山形「新庄まつり」の前日に見られる“力技”の珍風景とは
山形県新庄市の行事「新庄まつり」は、街を行く豪華絢爛な山車(やたい)が目玉の一つですが、その準備として道路標識の向きを変える作業があるといいます。どのような事情があるのでしょうか。
まつりの最中に電線を持ち上げることも!?
2023年8月、山形県新庄市で、ユネスコ無形文化遺産に登録されている「新庄まつり」が開催されました。実はこのお祭りに向けて、道路標識の向きを変える作業が行われていたのですが、なぜ標識を動かしたのでしょうか。
8月24日から3日間、新庄まつりが開催されました。
新庄まつりは江戸時代中期の1756(宝暦6)年、藩主だった戸沢まさのぶが五穀豊穣を祈願するために始めた「新祭」が起源といわれており、神輿渡御(みこしとぎょ)行列や街を練り歩く豪華絢爛な山車(やたい)が大きな見所です。
2009年に国重要無形民俗文化財に指定されたほか、2016年には地域社会の安泰や災厄防除を願い、地域の人々が一体となって行う「山・鉾・屋台行事」として山車行事がユネスコ無形文化遺産に登録されています。
2023年も全19台のきらびやかな山車が登場し、多くの来場客を沸かせました。
そのような中、新庄市がフェイスブックに公開したとある動画が80万回以上再生され、注目を集めています。動画は道路標識を大人4人がかりで回転させている様子を収めたもので、「市内各所では山車の運行に合わせて、道路標識の向きを変える作業が行われています」とのコメントが添えられています。
実は、新庄まつりの際には山車が標識に衝突しないように、毎年通行ルートにある標識の向きを変えています。
この動画に対しては「新庄市民ですが、こんな事をしているなんて初めて知りました」「すごい技術だ~!」「お祭りの街だからこういう作りなんですね」など感嘆の声のほか、「標識は避けられるけど電線は大丈夫なのかな?」といったコメントが寄せられました。
道路標識の向きを変えるこの作業に関して、新庄市商工観光課の担当者は次のように話します。
「祭りに登場する山車の中には、飾りの高さが5mくらいのものもあるため、飾りが標識に接触しないように向きを変えています。このような回転式の支柱は市内に5本あり、新庄まつりが開催される前日(8月23日)に向きを変え、終了後の27日に向きを戻す作業をしています。山車を運行する人はお祭りに慣れている人が多く、ここ最近で山車が標識に衝突するといった事故は起きていません」
また、標識を動かす仕組みについては、次のように説明しています。
「支柱の下部に付いているカバーを外し、根元を複数人でねじって向きを変えます。基本的に年に1回しか動かさないということもあり、非常に力の要る作業です」
さらにフェイスブックのコメントで寄せられていた「山車が電線に引っ掛かることはないのか」という疑問について、担当者は次のように話しています。
「山車の通行ルートの中には一部電線の位置が低くなっている場所もありますが、山車がそのような場所を通過する際には『電線上げ』という役割の人が、『トンボ』を使って電線を持ち上げ、引っ掛からないようにしています」
このように、実はお祭りの裏方ともいえる人が山車のスムーズな通行を支えているのです。
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山形県新庄市では毎年、「宵まつり・本まつり・後まつり」の3日間にわたって歴史的な大祭である新庄まつりが開催されており、山車の通行に関しては道路標識の向きを変える、電線が引っ掛からないように持ち上げるなどの工夫がされています。
来年は、陰で活躍する人の存在に思いを馳せながら楽しむのも良いかもしれません。