えっ…? 天井から「謎のノズル」なぜぶら下がる? ガソリンスタンドで遭遇「どうやって給油する?」 意外な仕組みとは

ガソリンスタンドのなかには、給油ノズルが天井からぶら下がっているところがあります。最近はあまり見かけなくなりましたが、どのような仕組みになっているのでしょうか。

最近見なくなった? 懸垂式のガソリンスタンド

 ガソリン車やディーゼル車は、ガソリンスタンドで燃料を給油します。
 
 そのガソリンスタンドでは、給油機(固定計量器)の横にクルマを停めて給油ノズルを給油口に差し込んで燃料を入れますが、なかには給油ノズルが天井にぶら下がっているところがあります。

給油ノズルが天井からぶら下がっているガソリンスタンドの仕組みは?
給油ノズルが天井からぶら下がっているガソリンスタンドの仕組みは?

 この、給油ノズルが天井からぶらさがっているものは「懸垂式(けんすいしき)」と呼ばれます。

 近年、懸垂式のガソリンスタンドは少なくなりましたが、一体どのような仕組みで給油するのでしょうか。

 懸垂式で気になるのは、燃料を貯蔵する「燃料タンク」がどこにあるかという点です。

 この場合も、通常の「地上固定式」のガソリンスタンドと同じく、地下に燃料タンクが存在しており、タンクローリーから地下燃料タンクへの燃料補給も地上にあるローリー補給口からおこないます。

 そして、地下にある燃料タンクから、燃料ポンプを使って天井へ圧送。その後給油ノズルから燃料が出てくるという仕組みになっています。

 そんな懸垂式ガソリンスタンドのメリットは、敷地の面積が狭くても給油台数が確保できることにあります。

 敷地面積が狭い土地で地上固定式だと、給油機の配置で一度に給油できる台数が決まってしまいます。

 地上固定式では4台程度しか同時給油ができない敷地でも、懸垂式であれば倍の8台の同時給油が可能となるなど、効率よく給油台数が確保できるのです

 そして、地上に給油機がないことから、来店客が給油レーンに迷わない点もメリットとして挙げられます。

 クルマの左右どちらかに給油口がありますが、地上固定式の場合、給油口と反対レーンに停車すると給油ができません。

 その点、懸垂式は、左右1m程度スライドが可能となっており、さらに給油ノズルが一番下まで降りてきたときに下に強く引っ張ると30cm程度は伸ばすことが可能。

 この給油ホースを伸ばせることが重要で、同じ方向から給油口が同じ側にあるクルマが2台来店しても、わざわざ停車レーンを変更せずに同時給油ができます。

 さらに、固定式のように給油ノズルを戻さなくても給油を終了させることができます。

 たとえば、株式会社トミナガの給油ノズルは、手元のスポンジを素早く2回握ると給油終了のセンサーが作動して代金の精算が可能となっており、そのまま次のクルマを誘導して再度セッティングをすることで連続給油ができます。

 たくさんのクルマを短時間で給油でき、給油台数が多くなると、ガソリンスタンドの利益で大切な油外(燃料以外の洗車、オイル類の販売など)に結び付けられることが多く、そういった点も懸垂式のメリットといえるでしょう。

 一方でデメリットもあります。懸垂式のガソリンスタンドは、構造的にセルフサービス向きではなく、スタッフが給油をおこなう有人のガソリンスタンド向けです。

 大人が手を伸ばせば届くところに給油ノズルがぶら下がっており、夜間などスタッフが不在のときに盗難やいたずらをされてしまうことがあります。

 また、ダンプなどの大型トラックが通り抜けをするによって荷台に給油ノズルが引っ掛かり、給油ノズルが根元からちぎれてしまうという破損に注意する必要もあります。

 ほかにも、鳥が巣をつくり、その糞が給油ノズルなどに付着してしまうといったこともデメリットとして挙げられるでしょう。

※ ※ ※

 地上に給油機がないので、クルマが来店するとすぐに駆け付けることができるのがメリットのひとつですが、スタッフが誘導時の距離感を把握していなければなりません。

 給油場所まで誘導したはいいけど給油ノズルが届かないといったこともあり、スタッフは経験を重ねて正しい停車位置を身に着けることが必要です。

 懸垂式のガソリンスタンドで給油する機会があったら、スタッフがどのように誘導しているのか、どうやって給油ノズルを伸ばしているのかを観察してみるのも面白いかもしれせん。

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