「カムリ」「マーチ」「CR-V」も… 歴史あるクルマが続々廃止! 人気車と不人気車の格差が生じる訳とは
人気車と不人気車の格差が激しくなっている
ただし全店が全車を扱うと、国内販売が少数の人気車に偏り、大量の不人気車が生じてリストラが過剰に進むこともあります。
その代表がホンダと日産です。
ホンダも以前は複数のチャネルを設けており、多くの車種を販売しましたが、2006年にホンダカーズへ統合。そこから販売格差が拡大していき、初代「N-BOX」が2011年、現行の2代目N-BOXが2017年に登場して大ヒットすると、その差はますます広がりました。
2023年1月から6月には、国内で新車として売られたホンダ車の40%がN-BOXになり、同車を含めた軽自動車全体では50%を上まわります。そこに、普通車の売れ筋である「フリード」を加えると70%を超えるのです。
つまり今のホンダの国内販売は、軽自動車+フリードで完結するため、残りの30%には力が入りません。その結果、国内に投入される大半の小型/普通車では、判断が場当たり的になり、車種の廃止と復活を繰り返しています。
例えばオデッセイは、2021年に狭山工場の廃止に伴って生産終了を発表しましたが、この時点でホンダの関係者から「オデッセイの廃止には、ホンダの社内と販売会社の双方で反対意見が根強い。今後復活させるかも知れない」という話が聞かれました。
車種を廃止すると、ユーザーは見放された気持ちになって他社に乗り換えることも多く、通常は慎重に判断します。従って廃止の後で復活することは稀ですが、ホンダの場合、国産販売の70%以上が軽自動車+フリードですから、オデッセイの取り扱いが慎重さに欠けたのでしょう。
日産も同様で、2007年までは販売系列があり、専売車も用意しました。その後、全店が全車を扱うようになって販売格差が進み、2023年1月から6月における日産の国内販売では、軽自動車の比率が約40%に達します。そこに「ノート/ノートオーラ」、「セレナ」を加えると、国内で売られた日産全車の80%近くになるのです。
このように全店で全車を売る販売体制に変わり、車種ごとの販売格差も進み、売れ行きが一部の軽自動車/コンパクトカー/ミニバンに集中して、セダンを中心とした伝統ある車種が販売終了に追い込まれています。
メーカーの方針転換による車種の廃止もあります。マツダの場合、2012年に発売された初代「CX-5」以降、内外装がカッコ良くて走りの楽しいクルマ造りを追求しています。その結果、天井の高いクルマも、全高が1700mm前後までのSUVになりました。
ミニバンの「プレマシー」や「ビアンテ」、背の高いコンパクトカーの「ベリーサ」などは、マツダの新しい方針と親和性が低く廃止されました。
ただし2012年以降のマツダ車の売れ行きは伸びていません。2010年の国内販売台数は22万3861台で、2015年は24万5487台に増えましたが、コロナ禍前の2019年は20万3576台でした。
マツダの販売店からは「ミニバンのお客さまを逃したのは辛い。トヨタと業務提携を結んだ時は、ヴォクシーのOEM車が欲しいと本気で考えた」という話も聞かれるほどです。
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車種の廃止は合理化のために避けられませんが、全店が全車を扱って売れ筋車種が極端に偏るとマイナス効果も大きいです。
2023年1月から6月のメーカー別販売ランキングを見ると、1位のトヨタに続いて2位にはスズキ、3位にはダイハツが入りました。かつて上位だったホンダは4位、日産は5位です。
限られた軽自動車と小型/普通車だけが売れる状態に陥ると、結局は国内の販売総数が減り、メーカー別販売ランキングの順位も下がります。
ちなみに2位のスズキは、近年では小型車にも力を入れています。車種の廃止も実施しますが、他社ほど目立ちません。ダイハツは今でも軽自動車が中心で、同様にロングセラー商品を大切に販売しています。
今のホンダや日産に必要なことは、日本のユーザーが欲しいと考える小型/普通車を充実させることです。廃止せずに済む商品を開発して、少しずつ、着実に販売していくバランスの良さが求められています。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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