えっ…!「スライドドア」片側だけ!? しかも右は「ドアすら無し」? ミニバンのドアが両側に付いていなかった「謎」に迫る
日本初のスライドドアは商用車から始まった
ところで、日本ではいつからスライドドアが使われるようになったのでしょう。
日本初のスライドドア装着車は、1964年発売の日産「ダットサン キャブライト ライトバン」でした。

当時の商用ライトバンやルートバンでは、リアドアは小さく、開閉方法もヒンジ式だっただけに、狭い場所で荷物の積み下ろしをするような場面でダットサン キャブライトのスライドドアは強みを発揮し、その便利さに注目が集まりました。
同車の登場後は、日産「キャブオール ライトバン」(2代目・1966年)、マツダ「ボンゴ バン」(初代・1966年)、トヨタ「ハイエース」(初代・1968年/ただし一部モデルはヒンジ式)、ダイハツ「ハイゼット スライドバン」(初代・1972年)などが相次いでスライドドアを採用しました。
やがて商用ワンボックスバンのほとんどが、スライドドアを持つようになりましたが、その多くが左側のみの片側スライドドアでした。
その頃に続々と登場したのが、現在のミニバンの前身であるワンボックスワゴンです。
トヨタの「ハイエースワゴン」をはじめ、日産「キャラバンコーチ」、三菱「デリカスターワゴン」など、3列シートを備えた豪華仕様が1970年代後半から1980年代にかけて各社から誕生していますが、その多くが商用バンと車体を共用していたのです。
バンボディと共有したことで、乗用ワゴン仕様でも片側スライドドアが主流でしたが、それは当然のように受け止められていました。
初代エスティマなど、初期のスライドドア式ミニバンが片側スライドドアだけだったのは、その名残といえるものです。
なお商用バンの片側スライドドアは、現在ではハイエースの一部に残るのみで、ほとんどが両側スライドドアを備えています。
ちなみに軽自動車で両側スライドドアを初装備したのは、前述の初代ハイゼット スライドバンです。
それ以降現在に至るまで、ほとんどの軽ワンボックス車は早くから両側スライドドアを持っていたのは興味深いところです。
混みあった街中で素早く小口配達を行うため、運転席を降りてすぐにアクセスできる右側のスライドドアは重宝されたことでしょう。
※ ※ ※
最後に、これはスライドドアの話から脱線するのですが、国産乗用車で右側にリアドアがない例は他にもあります。代表的なのはスズキ「ワゴンR」(初代・1993年)です。
ヒンジ式のリアドアが左側のみに備わっていたのは、コストを抑えるためという理由も含まれているでしょうが、さすがに利便性に劣るためか、のちに右リアドアが追加されています。
両側スライドドア仕様の派生モデル「ワゴンR スマイル」すら登場している現在のワゴンRからは、想像もできないところです。
これもまた、当時のワンボックスワゴンやミニバンは「片側ドアで当然」という時代の常識を反映していたといえるでしょう。
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。
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