「ヴェルファイアは廃止せず!」 トヨタの「高級ミニバン」なぜ2台同時に全面刷新? 新型「アルファード」に生じた矛盾とは
ヴェルファイアを存続させたことで生じた矛盾とは
そうなると新型アルファードの最上級グレードである「エグゼクティブラウンジ」に、19インチタイヤがメーカーオプションとして用意されるのは矛盾を感じます。
19インチタイヤをオプションで加えても、新型ヴェルファイアのように硬めのショックアブソーバーやフロントパフォーマンスブレースは備わらないからです。
19インチタイヤを装着したいなら、走りと乗り心地のバランスを考えて新型ヴェルファイアを選ぶべきなのですが、まさにこの点が、新型アルファードを豪華志向、新型ヴェルファイアをスポーツ志向として存続させた難しさです。
というのも、「新型アルファードの外観に、大径の19インチタイヤを組み合わせて欲しい」というニーズも生じるからです。
このユーザーの期待に正確に応えるには、19インチタイヤ+硬めのショックアブソーバー+フロントパフォーマンスブレースもセットにして、新型アルファードにオプション設定する必要があります。
しかしそうすると、先に述べた新型アルヴェルの性格の違いが曖昧になってしまい、オプション設定も複雑になります。
この矛盾は、ヴェルファイアを廃止して姉妹車関係も終了させ、アルファードのみにすれば解消されるものでした。
先代アルファードには、標準ボディと、エアロパーツや18インチアルミホイールを装着する「S/S・Cパッケージ/SC」が用意され、同様のグレード展開を新型でも行う方法がありました。
ところがこのS系グレードなどの役割を新型ヴェルファイアという別の車種に任せたため、多彩なニーズへの対応が可能になる代わりに、「新型アルファードの外観に19インチタイヤ」という新たな欲求も生まれることになったのです。
メーカーは面倒を抱えましたが、ユーザーから見れば選択肢が広がってメリットになります。その代わりタイヤ選びの注意点も生まれました。
新型アルヴェルには、ディーラーオプションとして20インチのタイヤとアルミホイールも用意されていますが、これを装着する時も、足まわりとの親和性は新型ヴェルファイアのほうが高いでしょう。
新型アルファードに装着するなら、同じくディーラーオプションのGRパフォーマンスダンパーセットを組み込むといった工夫が必要になると思います。
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今回のフルモデルチェンジでヴェルファイアが廃止されていたら、新型アルファードに豪華志向とスポーツ志向のグレードが用意され、選び方は単純でした。
しかし新型ヴェルファイアをスポーツ志向として独立させたことにより、タイヤの選択を含めて、デザインと走りをいろいろと思い巡らす余地が生まれています。
結局のところ、ユーザーにとってはどの方法が幸せなのでしょうか。「新型アルファードにパワフルな2.4リッターターボを搭載して欲しい!」というニーズもあるでしょう。
それなら思い切って、新型ヴェルファイアに、新型アルファードの外観をオプション設定して顔を自由に変えられたら、ユーザーに喜ばれるかも知れません。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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