トヨタ「セラ」 語り継がれるバブルの徒花、その個性
上屋のほとんどがガラス張り、しかも跳ね上げ式ドア。かつてそんなクルマが国内向けに発売されていました。トヨタ「セラ」、なぜ生まれそして1代限りとなってしまったのでしょうか。
語り継がれる唯一無二の個性
自動車の歴史を振り返ると、現代から見れば不思議そのものの珍車が数多く存在します。そのなかでもトップクラスの個性を誇るのが、トヨタの「セラ」でしょう。
「セラ」は1987(昭和62)年の「東京モーターショー」に出品された、コンセプトカー「AXV-2」の量産型として1990(平成2)年に発売されました。
最大の特徴は、「あらゆる天候下でのオープン感覚の体験」を実現するドア。通常はボディの横面だけのドアガラスを、「セラ」では屋根まで回しました。つまり、上屋のほとんどがガラスで構成されており、しかも、ドアは斜め前上方に開く、いわゆるガルウィングドアを採用していたのです(構造的な動きから厳密に言うと「バタフライドア」が正しい)。
「セラ」は、当時のコンパクトハッチバックである「スターレット」がベースです。大衆車である「セラ」なのに、ドアはスーパーカーの専売特許のように思われていたガルウィング。当時、これには誰もが驚き、高い注目度を誇りました。