なぜ「軽自動車は海外販売」されない? 規格制定から70年以上も… ほぼ海外展開されない理由とは

軽自動車が海外展開されない理由は「そもそも想定していない」?

 2022年9月にインドネシア・ジャカルタではホンダがN-BOXを同市場で初めて展示されました。

 関係者によれば「あくまでも参考展示です。軽自動車はアジアから一定の需要がありますが、正規販売はしていません」と言います。

 軽自動車が海外で販売されない最大の理由は、そもそも軽自動車は日本独自の規格であるため、企画段階から海外での販売を想定していないことにあるようです。

 ある自動車業界関係者はその理由を次のように説明します。

「新車を販売するためには、その国や地域におけるさまざまな認証試験に合格する必要があります。

 衝突安全基準はその代表例ですが、軽自動車のほとんどは、現状のままでは海外の衝突安全基準を満たすことができません。

 これは軽自動車の安全性が不十分というわけではなく、その国や地域の基準に合わせたチューニングを行なっていないという意味です。

 チューニングをすれば問題なく基準を満たせるとは思いますが、そもそも日本以外の市場で販売することを想定していないため、そうしたコストを掛ける必要がないというのが実際のところです」

日本の軽自動車規格とは別モデルとなるインドのスズキ「ワゴンR」
日本の軽自動車規格とは別モデルとなるインドのスズキ「ワゴンR」

 では、必要なチューニングを行ったうえで、軽自動車を海外で販売することはないのでしょうか。別の自動車業界関係者は次のように話します。

「かつて、スズキはタイへ『アルト』を輸出していましたが、『安かろう悪かろう』のイメージが強かったために販売台数が伸びず、ほどなくして撤退しています。

 機能や装備を見直し、よりパワフルなエンジンを搭載すれば人気が出たのかもしれませんが、それはもはや軽自動車ではありません。

 クルマに求められるものは、各市場でまったくといっていいほど異なります。

 そう考えると、日本のユーザーに向けてつくられた軽自動車を海外でも展開するというのは、現実的な話ではないのだと思います」

2019年6月15日にほぼ日本仕様のままパキスタンで発売されたスズキ「アルト」
2019年6月15日にほぼ日本仕様のままパキスタンで発売されたスズキ「アルト」

※ ※ ※

 一方、スズキはパキスタンにおいて、2019年6月15日より日本の軽自動車規格となる「アルト」の現地生産・販売を行なっています。

 スズキの広報は次のように説明していました。

「外観はパキスタンの道路事情を考慮して最低地上高を高くしている以外は、日本仕様から大きな変更はありません。

 細かな部分では、フロントグリルの空気導入口が拡大・追加され、パキスタンの気候に合わせてラジエーターの冷却性能を向上させています。

 さらに、日本仕様では樹脂製のフロントフェンダーと燃料タンクが装着されていますが、現地で部品を調達する関係上によりスチール製に変更されています」

 また導入背景について、当時の発表では次のように説明されています。

「スズキは、経済性と信頼性が高く、高性能な軽自動車を、日本のみならずグローバルに展開することで、同社が強みとするコンパクトカーの更なる普及を図っていきます」

 日本の自動車メーカーが新車販売のほとんどを占めているパキスタンでは、日本車への信頼が厚いことにくわえて関税優遇もあることから、これまでも一定数の軽自動車が日本から輸入されていました。
 
 こうした事例は決して多くはありませんが、パキスタンのように、ユーザーのニーズや政策が追い風になる市場であれば、軽自動車の海外展開もありうるかもしれません。

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4件のコメント

  1. スズキ自動車及び本田技研の話が中心のようですが、ダイハツやスバルの話はしなくて良いのですか?
    なぜ事例として取り上げていないのですか?

  2. ダイハツやスバルの事例を取り上げていらっしゃらないのはなぜですか?

  3. 単純に日本国内では軽自動車は軽自動車として認識されるけど、海外の知らない人から見れば小排気量の小型車という認識に成るのでは。日本では排気量660cc以下で作られているけど、それが800や1000でもエンジン自体はそんなに大型化するわけでも無いですから、国の事情に見合った排気量に上げれば売れるのではないかと。
    今は生産終了したイタリアのApe(50~150cc)だって狭い街中を軽快に走れる車として人気だった訳ですし、国としてというよりも景観維持のために街の道路を拡幅できない特定の地域では小さな車は重宝されるかも。

  4. 左ハンドル仕様にする余裕が無いとかもあるのかな?

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