トヨタ新型「クラウンセダン」は全長5m超えの「高級なショーファーカー」となった! 「いつかはクラウン」が世界進出へ ”セダン“の変遷とは
トヨタは2023年4月18日から開催された中国・上海モーターショーで、新型「クラウン セダン」を出展しました。これまでは“国内専売のセダン”というイメージの強かったクラウンですが、新世代のクラウン セダンは、グローバルモデルへと変貌を遂げているようです。
クラウンセダンもしっかりグローバルモデルになる?
トヨタは2023年4月18日から開催された中国・上海モーターショーで、新型クラウンの「セダン」と「スポーツクロス(国内ではクロスオーバー)」の実車が展示されました。
世界初公開されたのは2022年7月、「クロスオーバー」、「セダン」、「エステート」、「スポーツ」の4つに分かれ、これまでとは大きく違う新たな“クラウンシリーズ”となったことを明らかにした16代目クラウンですが、なかでも日本で注目が集まっているのはセダンです。
ボディサイズは、全長5030mm×全幅1890mm×全高1470mm、ホイールベース3000mmとなり、日本ですでに販売が始まっている「クロスオーバー」より少し大きくなりました。
日本ではセダン不調の時代が続いており、トヨタでは「カムリ」の日本販売終了が決まっているなか、新型クラウン セダンという存在はトヨタにとって、そしてユーザーにとってどんな立ち位置のクルマなのでしょうか。
まず気になるのは、なぜセダンが中国でも展示されたのかという点です。
背景には、中国では未だにセダン需要が旺盛であり、また高級車ブランドとしてのクラウンの認知度がある程度高いという点が挙げられます。
中国国内にある日系自動車メーカーのカーデザイナーは「中国では良い意味で“クルマで見栄を張る””ことが大切」と指摘します。そのうえで、「ショーファーカーとしてのセダンでは、ロングホイールベースで後席スペースが多いこと」と「大きなフロントグリルで強靭なパワートレインをイメージさせること」がデザイン手法として重要だと説明します
中国市場では近年、エントリーモデルや中級モデルではセダンが堅調であると同時に、SUVシフトが進んでいます。
そのため、中国人にとってはエントリーモデルから「セダンの上級化の階段を一歩一歩上がる」という、いわゆる「いつかはクラウン」というイメージよりも、新型クラウンセダンは運転手さん付きの高級なショーファーカーという立ち位置で見ているのではないでしょうか。
また、クラウンはアメリカでもクロスオーバーが発売されており、今後セダンについてどうなるのかは気になるところです。
いずれにしても、その他の国や地域を含めて、16代目となった新型クラウンはトヨタにとっての真のグローバルカーになったと言えるでしょう。
では、なぜ今クラウンがグローバルカーになる必要があるのでしょうか?
15代目までは、中国など一部地域でも販売した期間があったものの、クラウンはいわば「ほぼ日本専用車」というべき、日本をメインに見据えた高級セダンでした。
さらに時代をさかのぼってみると、戦後の復興期から日本全体がなんとか抜けだそうとしていた1950年代半ばに、国産車の上級モデルとして登場した初代クラウンがすべてのはじまりです。
続く1960年代半ばになると日本は本格的な高度成長期を迎え、乗用車市場が急成長するなか、クラウンはトヨタが企業として成長するうえでのシンボリックな存在となっていきます。
1970年代になると、大衆車「カローラ」にはじまり、「コロナ」や「マークII」、そして高級車「クラウン」といった「セダンカテゴリーの階段」が確立されました。
当時は、家族にとってのクルマと言えばセダンであり、若者やスポーティなクルマを好む人が2ドアクーペという、二者択一のようなクルマ選びでした。
さらに、日本経済が徐々に成熟期に入る1980年代には、トヨタは「いつかはクラウン」というキャッチコピーを用いて、改めてクラウンがトヨタのみならず、他ブランドを含めて、日本車のフラッグシップであることを強調して見せました。
ところがその後、クラウンを取り巻く市場環境は大きく変ります。
トヨタが以前、報道陣向けに公開した資料によると、クラウンの販売台数は1990年代前半のバブル期での年間21万台をピークに落ちていきました。
具体的には、12代目(2003年から2008年)は累計23.5万台、13代目(2008年から2012年)が累計16.5万台、そして14代目(2012年から2018年)が21.2万台という販売実績です。
また課題の1つとなったのが、クラウンユーザーの高齢化でした。そのため、2018年登場の15代目ではTNGA(トヨタニューグローバルアーキテクチャー)をFR(後輪駆動車)に再設定し、パワートレインを多様化、ユーザー層の若返りを図りました。
そんな15代目のマイナーチェンジのタイミングで、豊田章男社長(当時)が「クラウンというブランドを再定義」するという大きな経営判断を下します。
サプライズ登場した16代目は、クロスオーバー、セダン、スポーツ、そしてエステートという四系統を採用。言うなれば「シン・クラウン」へと変貌し、クラウンはそれまでの「ほぼ日本専用車」の殻を破り、グローバルカーへと進化しました。
そんななか、16代目 新型クラウン セダンでは、FCV(燃料電池車)の採用も決まりました。
トヨタを含め、日本メーカー各社による業界団体である日本自動車工業会では「カーボンニュートラルにはBEV(電気自動車)以外にも様々な手法がある」、または「国は地域の社会環境によって電動化の進み方は大きく違う」という一環した主張をしているところです。
そうしたなかで登場した新型クラウンセダンは、多様な社会環境にある国や地域で、「いつかはクラウン」と認めてもらえるグローバルカーになることを期待したいと思います。日本でも、新型クラウンセダンを待ち望んでいる人は少なくないはずです。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
うーん、あんまりベンツやBMW,アウディ、リンカーンみたいな高級車じゃないのね。もうLSあるしクラウンの役割が分かりません!
クラウンをよく見かけるようになりましたけど、中途半端な成金外車がやるようなスピード出しての暴走は見たことがないです
それなりに落ち着いた層が乗る車ですね
レクサスとかはほとんどそんなドライバーばかりです