マツダの象徴「ロータリー」再び「輝く」! ロータリーエンジンがEV新時代を支える「カギ」となる!?

ロータリーを軸にすると見えてくる「マツダ」進化の道筋とは

 EVシフトや電動化といった観点でマツダの未来を考えるうえで、今回のオートモビルカウンシルの出展は、ユーザー、自動車業界関係者、そしてマツダ関係者自身にとって有意義な場になった、という印象があります。

 なぜならば、改めて「ロータリーエンジンを軸足としてマツダを見ること」ができたからです。

マツダらしい技術を十分に活かし、EV航続距離を延ばす「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」のパワートレイン
マツダらしい技術を十分に活かし、EV航続距離を延ばす「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」のパワートレイン

 筆者(桃田健史)は今回、ロータリーエンジンの開発に長年携わってきたエンジニア、マツダ百年史の編纂(へんさん)に携わった担当者、マツダ主要モデル担当の元主査、マツダ経営幹部など、様々なマツダ関係者と直接意見交換しました。

 そこで浮き彫りになったのは、仮にMX-30 R-EVが世に出なかった場合、マツダロータリーエンジンの歴史に事実上終止符が打たれてしまい、結果的に「マツダの将来像」をイメージすることが難しくなったはず、という点です。

 今回オートモビルカウンシルのマツダブースに出展されたロータリーエンジン搭載車は3台ありました。

 世に出た順では、1975年発売の「コスモAP」、2006年に国内でリース販売を行った「RX-8 ハイドロジェンRE」、そして2023年発表のMX-30 R-EVです。

 これら3台は、それぞれの時代での「企業としてのマツダの考え方」や「マツダ車がこれからありたい姿」の象徴なのだと感じます。

 例えばコスモAPは、アメリカ市場での復権を目指し、マツダ初となる高級スペシャリティカーとなったモデルで、ロータリーエンジンの燃費は従来比で40%減を達成しています。

 マツダ百年史・正史編によれば、70年代初頭の第一次石油危機により、当時アメリカ市場シフトを急速に進めていたマツダは経営危機に直面し、そこから復権するためにコスモAPが大きな役割を果たしたと記述されています。

 RX-8 ハイドロジェンREは、水素燃料とガソリンが切り換え可能なデュアルフューエルシステムを搭載したロータリーエンジン車です。

 当時、欧州を中心に水素を自動車用燃料として活用する議論が高まっていました。世界の国や地域において、地球環境に対する視点から自動車の未来を考えるようになった時代でした。

 結果的には、燃料電池によって自車発電する電気自動車であるFCV(燃料電池車)が水素活用の主力となり、水素を直接燃焼するタイプのエンジンの需要は増えていきませんでした。

 ところが2020年代に入り、トヨタを中心として水素燃料車の研究開発が急速に高まっている状況です。

 そして今、2050年のカーボンニュートラル実現(脱炭素社会)に向けて、BEV以外にも、カーボンニュートラル燃料、e-フューエル、次世代バイオ燃料、そして水素など新しい液体燃料または気体燃料の利活用というように、多様な手段に対する議論が進み始めています。

 そうした時代の流れのなかで、ロータリーエンジンが発電機という役目で再登場したことは、マツダにとって極めて大きな意義があるのだと感じます。

 マツダ史を振り返ってもわかる通り、ロータリーエンジンは単なるハードウエアではなく、時代が変わってもマツダの企業理念を貫く、一本の「太い矢」なのだと思います。

 マツダが現時点で描く、2030年時点での自社グローバル販売数の中でのEV比率は、25%~40%とフレキシブルな設定です。

 しかし2030年代になってもマツダにとってロータリーエンジンが果たす役割は、技術面のみならずマツダの企業理念を未来へと貫いていくうえで、とても大きな存在であり続けることは間違いないでしょう。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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