日本では売ってない「日本車」!? 国内導入の可能性はある? ワイルドすぎるスバル「ウィルダネス」とは
そんなスバルにとっての最重要地域であるアメリカはSUV発祥の地としても知られます。
現状では、乗用を主体とするピックアップトラックとSUVで構成される「ライトトラック」部門が、アメリカ市場全体の7割以上を占めています。
ここで時代を少しだけ振り返ってみます。
スバル本社は2000年代中盤から後半にかけて、思い切った「アメリカシフト」を念頭に置いた商品開発戦略に舵を切りました。
その結果2010年代に入り、欧米メーカーが手薄だったアメリカの中小型SUVセグメントで、スバルはシェアを拡大していきます。
ただし、トヨタ・ホンダ・日産という日系ビッグ3や、フォード・GM・ステランティス(旧クライスラー)という米国系ビッグ3、さらに欧州や韓国メーカー、そしてテスラもSUV「モデルY」を投入するなど、中小型セグメントでセダンからSUVへのシフトが加速化。スバルにとってライバル車が多数存在する時代に突入しました。
そうしたなかで、2010年代後半頃からアメリカのSUV市場で顕著になってきたのが、「オーバーランド」と呼ばれる冒険心をあおるようなオフロードのカテゴリーです。
米国の広大な砂漠や森林といった道なき道をひたすら長距離移動する旅にも対応可能な、タフな仕様が求められます。
ウィルダネスはまさに、スバルとしてオーバーランドの世界感を具現化したものだといえるでしょう。
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もうひとつの要素として、アメリカと日本における「スバル商品ラインアップでの違い」があります。
それは「STI(スバルテクニカインターナショナル)」です。
STI本社幹部は「アメリカではSTIをサブブランドとしてとらえず、ひとつのグレードというイメージが強いです」と指摘します。
一方でひとつのグレードではなく、アメリカでのサブブランドに成長したウィルダネスは、STIと正反対の状況にあるといえるでしょう。
もともとアメリカにおけるSTIブランド展開は、これまであまり上手く動いてきませんでした。
これは、STIブランド構築の基盤となったWRC(世界ラリー選手権)に対するアメリカのユーザーの認知度が、日欧に比べ高くないことが要因だとされています。
そのためSTI本社は2019年、スポーツセダン「WRX STI」をベースにエンジンや足回りを専用開発したチューンドモデル「S209」を北米専用として導入するなど、アメリカにおけるSTIブランド再構築を目指してきました。
一方SOAとしては、量産各モデルに対して、日本ほどはユーザーの認知度が高くないSTIグレードを設定せず、アメリカ独自のサブブランドであるウィルダネスを拡充させているというわけです。
こうしたアメリカでのウィルダネスの実状から考えると、スバル本社としては、現段階で日本にウィルダネスを導入するのは、日本ユーザーのブランドイメージの分散につながりかねず、時期尚早と考えているのかもしれません。
ただし近年のアウトドアブームにともなう本格派志向の盛り上がりとともに、日本国内でユーザーや販売店から「どうしてもウィルダネスが欲しい」という声がさらに高まれば、状況は変わるかもしれません。
例えば台数限定の特別仕様車として登場する可能性も残されていると筆者は見ています。
今後のスバルの動向を注意深くウォッチしていきたいと思います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
スバルは米市場が儲け頭だから日本は二の次。
国内は競争が激しいし儲けも少ない、スバルの市場占有率も下からが良いところ、特異な対抗エンジンで一部の愛好者には受けるが燃費もそこそこ。そんなこんなで熱意がイマイチかな?