「フロントバンパー」左右に“穴”が開いたクルマなぜ増えた? 単なる飾りじゃない! どんな効果が期待できる?
最近のクルマは、フロントバンパーの左右に穴(スリット)を設けたモデルが増えています。この穴は何のためにあるのでしょうか。
ある効果を狙って設けられたフロントバンパーの穴
クルマのデザインはトレンドや技術の進化とともに変化していきます。近年増えてきたデザインの代表的な例として挙げられるのが、フロントバンパー左右端に縦長に開けられた穴(スリット)です。
デザインの都合上における単なる飾りかと思うかもしれませんが、しっかりと実際に穴が開けられていて、ダクトとしての役割を持たせていることが多い部分でもあります。
穴を開けることで、どのような効果があるのでしょうか。
このダクトは、フロントバンパーから空気を取り入れてタイヤハウスに流すために設けられています。
タイヤハウスに空気を流すと聞くとブレーキ冷却のために設けられているダクトかと思うかもしれませんが、そうではなく、タイヤハウスに空気を整えて流す(整流)ために設けられているのです。
「単に空気を流すだけならば意味がないのでは?」と思う人がいるかもしれないですが、そんなことはありません。
タイヤハウスに整えて空気を流したあと、整えられた空気の流れは車体側面に流されます。これを実現することで、タイヤハウスで発生する空気抵抗の低減を実現し、燃費向上に繋がっているのです。
また、タイヤハウス周りの空気の流れを整えることは、直進安定性や旋回時の安定性にも繋がります。
燃費や電費を気にするエコカー・電気自動車はもちろん、スポーツカーにとっても有効な空力処理なのです。
この空力処理はメーカーによって呼び名が異なったりもしますが、「エアカーテン」などと呼ばれることが多いです。
空力技術はモータースポーツシーンから誕生し、市販車にフィードバックされることが多いですが、このエアカーテンも元々はモータースポーツで誕生した技術。
タイヤハウス後方に穴を開け、エアアウトレットと呼ばれる空気の通り道を作ることで、エアカーテンと同様の効果を狙ったものです。
これが形を変えてエアカーテンとして市販車にフィードバックされるようになりました。ちなみに、スポーツモデルでは市販モデルでもエアアウトレットが設けられることもあり、最近の例ではトヨタ「GR86」/スバル「BRZ」などがこれに該当します。さらに、航続距離を伸ばすためにEVなどにも採用されています。
また、一見するとエアカーテンが設けられていなくても、バンパー下に空気取り入れ口を設けてタイヤハウスまでダクトを繋げているという「隠れエアカーテン」を持つクルマも存在。それだけ、タイヤハウス周りの空力は現代の自動車開発において重要な要素となっているのです。
自動車での空力開発は長年おこなわれていますが、開発が進んだ結果、基本的なボディ形状での空気抵抗低減や空力開発は煮詰まってきている部分もあります。
そのため、エアカーテンのような細かな部分にも研究開発が及び、より空力性能を向上させようという狙いが施されています。
エアカーテン以外にも一見すると分かりづらい細かな部分での空力アイテムは取り入れられています。
最新モデルをじっくりと見る機会があれば、エアカーテンのような隠れた空力アイテムを探して、その機能や効果を想像してみるのも面白いかもしれません。
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