津波や洪水で「クルマが水没!」 窓が開かない場合はどうすれば良い? 危機的状況での正しい脱出方法とは

浸水したクルマ、乾けばまた乗れる!? エンジン始動はNG!

 次に、浸水や水没の被害に遭った場合、そのクルマはどうなってしまうのでしょうか。

 クルマはある程度の浸水にも耐えられるように設計されています。しかし、室内にも水が入ってしまったり、水面がマフラーより高い位置まで来るほど沈んでしまった場合には、プロに判断を任せることが大切です。

水没車の修理は難しく、エンジンまで水が入ると高額な修理代がかかります
水没車の修理は難しく、エンジンまで水が入ると高額な修理代がかかります

 最近のクルマは、エンジンは当然として様々な箇所が電子制御されているので、水が侵入したことで車両火災などの思わぬ事故につながる恐れがあります。

 また、氾濫した泥水に浸かってしまった場合には、ブレーキの中に泥や砂などの異物が入り込むことも珍しくありません。こうなると仮に走行できてもブレーキが効かないなど、大変危険な状況になります。

 国交省でも「水に浸った車両は、外観上問題がなさそうに見えても、感電事故や電気系統のショート等による車両火災が発生するおそれがあります」と注意を呼びかけており、同時に以下の警告を発表しています。

【1】自分でエンジンをかけない。特に、HV、EV車は高電圧のバッテリーを搭載しているのでむやみに触るのもNG

【2】車を移動する際はJAFなどロードサービスや最寄りのディーラー、整備工場に相談して行う

【3】使用するまでの間、発火するおそれがあるのでバッテリーのマイナス側のターミナルを外す

 なお、近年急増しているハイブリッド車や電気自動車などの電動車は、冠水や衝突事故などを想定した厳しいテストを行っており、水没しても感電しないために万全の対策を講じているといいます。

 自動車アセスメントをおこなっているNASVA(独立行政法人 自動車事故対策機構)も、試験項目に「電気自動車等の衝突時における感電保護性能試験」の内容を追加してハイブリッド車や電気自動車を評価しています。

 さらに、トヨタや日産では電動車が感電を引き起こさないよう安全に設計した上で、「レスキュー時の取扱い」として公式サイトに事故車を取扱う際の注意事項を公開しています。

 日産は、電動車が浸水した場合の注意点について以下のように説明しています。

「静止状態で浸水したという状況であれば、電動車もガソリン車と同じ扱いで問題ありません。事故などで車両に強い衝撃を受け、バッテリーの中身が露出するなどの損傷を受けた場合には注意が必要です」

 最後に、エンジンルームまでが水に浸かったクルマはその後、どう扱うべきなのでしょうか。廃車買取の専門業者に話をうかがいました。

「状況によってはクリーニングやパーツ交換、エンジン修理などで乗り続ける方もいらっしゃいますが、ほとんどの場合において水没車は廃車にした方が良いと言えます」

 水没車の修理は難しく、エンジンまで水が入ると高額な修理代がかかります。しかしそれ以上にダメージの大きいのが「室内の悪臭」です。

 下水や汚泥などが混じった泥水に浸かったクルマは強烈な悪臭を放つことがあります。そして、ルームクリーニングと消臭作業を繰り返しても完全には抜けない場合が多く、エンジンの修理費よりも悪臭除去にかかる費用の方が高額になるケースもあるということです。

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