欧州の「EVシフト」にブレーキ!? ドイツが「e-fuel」提案!「2035年完全EV化」なかったことになる?
前出のヴィンケルマンCEOはランボルギーニの親会社であるフォルクスワーゲングループ出身です。そのため、2010年代から世界に先んじてEVシフトを推進してきた同グループ全体としても、部品の共通性が今度さらに高まるという指摘から、e-fuelの必要性を示唆したとも考えられます。
例えば、EU内での社会情勢の違うさまざまな国や地域で販売されている、フォルクスワーゲン、セアト、シュコダなど、比較的販売価格が低いモデルがあるブランドでは、2035年の完全EV化の壁が高く、オプションとしてe-fuelを考えざるを得ないともいえそうです。
つまり、Fit for 55という大規模な規制が現実となっていく過程で、欧州域内での社会情勢の違いが改めて浮き彫りになってきたため、欧州域内での販売台数が多いメーカーを抱えるドイツがEUに対して修正案を要請したとも推測できます。
ただし、Fit for 55が可決して間もない時点でこうしたドイツ主導によるe-fuel活用が要請という形となった背景には、欧州の国や地域の思惑が交錯しているのではないでしょうか。
そこには、欧州域内だけではなく、アメリカや中国の動きを見据えた、欧州主要国間での政治的な駆け引きがあるように思えます。
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こうしたEUでの政治的な動きは、当然日本にも及ぶはずです。
とはいえ、日本では電動化の実現に向け、達成の時期を定めて義務化する規制はありません。また、メーカー各社は日本を含めたグローバルでの販売主要地域が違いますし、アライアンスなど他社との事業連携の状況でも差があります。
今回のドイツのEUに対する要請をどう捉えるかは、日本の自動車産業全体というより、日系メーカーそれぞれで捉え方が違うのではないでしょうか。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
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