14年ぶりに「トヨタの社長」が代わる! 豊田氏から佐藤氏に交代へ 交代劇のキーマンは誰なのか
トヨタは2023年4月1日付の役員人事および第119回定時株主総会日付の取締役の体制について発表した。
なぜこのタイミングなのか?
トヨタは2023年4月1日付の役員人事および第119回定時株主総会日付の取締役の体制について発表した。
そこでは、これまで約14年間にわたり社長を努めた豊田章男氏が会長に就任し、後任にはGRとレクサスのプレジデントとなる佐藤恒治氏が就任するという。
突如として発表されたトヨタのサプライズだが、どのような経緯があったのか解説していく。
企業にとって社長交代の発表はトップシークレットとはいえ、業界のなかに居るとある程度タイミングなど動きが解る。
しかしトヨタの社長交代、誰も予想出来なかったと思う。
社内の動きを一番知っているトヨタの広報部門ですら、15時30分に出されたリリースを見て驚いていたほど。
というのも豊田章男社長体勢を続けても問題無いばかりか、ますます好調。社長交代の理由無し。
ただ内山田会長辞任のタイミングで社長交代するという動きは予想出来ていたし、後任が佐藤恒治さんになるんじゃないかということも推測していた。
驚いたのは時期です。
ここ2、3年の豊田章男さんを見ていると意欲的だし、自動車産業全体を見据えた意見発信も活発。
レースやラリー活動だって盛んだった。私を含め、もう2年くらい社長を続けると皆さん思っていたことだろう。
となると不思議なのが「なぜ今か?」ということになります。
バックボーンから解説していきたい。
社長交代劇のキーマンになるのは内山田会長だと思う。
今更説明するまでもなく、豊田章男社長の持ち味といえば突破力。
最前線に立ってトヨタという「石橋を叩いて渡る」よりさらに慎重な「石橋を叩きすぎて壊す」(笑)。
体質を180度変換させ、超アグレッシブな企業体質に変えた。
だからこそ2022年も2位のフォルクスワーゲングループに大きな差を付け、世界TOPの販売台数を記録。
そういった動きを背中から支えていたのが現在トヨタの屋台骨になっているハイブリッド車を作り上げた内山田会長である。
初代プリウスのチーフエンジニア時代から何度かインタビューさせて頂いたのだけれど、極めて難しい技術を実現したとは思えないほど穏やかな紳士です。
突破力で進んだ道は、時としてフォローも必要。
豊田章男社長も記者会見でコメントしていた通り「厳しくてやさしいお兄さん役」だったようだ。
逆に考えると内山田さんが社内の意見を上手にまとめられる会長だったからこそ突破力を存分に発揮出来たんだろう。
社内で社長にさまざまな意見を言えるのは内山田さんだけ。豊田章男さんは雰囲気を読むのが上手。
内山田さんが引退したら会長の仕事を自分でしなければならないとも思っていたんじゃなかろうか。
ということで「内山田会長の引退時が社長交代になる」という話はトヨタ関係者も認識していたことだろう。
内山田さん、記者会見で豊田章男さんもいっていた通りヨットマンである。
2022年秋にも日付け変更線を越えるまで楽しい海談義をさせて頂いた。74歳ながらお元気。
そんなことから、社長交代まで短くて2年。内山田さんが元気なら4年と予想していた次第。
というなか、今回の交代発表となった。
記者会見で内山田さんの話を聞いていたら、少し前から「世代交代した方が良い」と考えていたという。
極めて健全だと思う。いつかは世代交代しなければならない。
内山田さんは「そろそろいいでしょう」と判断し、豊田章男さんに伝えた、ということです。
本田技研を立ち上げた本田宗一郎さんの人気は「辞め時」が素晴らしかったことも大きい。
内山田さんは自分が辞任したら社長交代になることを100%認識していたことだろう。
それを理解した豊田章男さんも素敵な判断だったと思う。
忙しくも人生で一番楽しい日々を過ごしているだろうタイミングでの判断なんだから立派だ。もちろん会長になったって存分に動けます。
後任の佐藤恒治さんは、2、3年前から豊田章男さんを師匠のようにして厳しい修行を積んできた。
顧客第一主義を原点としながらも「もっと良いクルマを作ろう」という改革の精神をキッチリ持つ。
直近のトヨタを見ていると良い方向を向いている。その路線をしっかりキープしていくんじゃなかろうか。
むしろ空席になったGRとレクサスのプレジデントが誰になるのか気になります。
Writer: 国沢光宏
Yahooで検索すると最初に出てくる自動車評論家。新車レポートから上手な維持管理の方法まで、自動車関連を全てカバー。ベストカー、カートップ、エンジンなど自動車雑誌への寄稿や、ネットメディアを中心に活動をしている。2010年タイ国ラリー選手権シリーズチャンピオン。
豊田章男氏はレーサー専任になるのか?(笑)