救急車を呼んだら消防車が来た? 火事じゃないのに消防隊が駆け付けるワケとは 背景にある“厳しい”事情

119番通報で救急車を呼んだのに、消防車が来ることがあります。本来は火災現場に駆け付けるはずの消防隊が、なぜ救急現場に来るのでしょうか。

消防車が救急現場に来ることもある

「火事ですか? 救急ですか?」

 119番に電話を掛けると、まずこのように質問されます。「救急です」と答えると、救急隊がこれから向かう場所や、急病やケガの状況などを聞かれます。

 そして通報後、しばらくするとサイレンが聞こえてきますが、実際には赤い消防車(ポンプ車)が先に来たり、白い救急車と一緒に消防車が駆け付けることがあります。

 火事ではないのに、なぜ消防車まで来るのでしょうか。

消防車のイメージ(画像:写真AC)
消防車のイメージ(画像:写真AC)

 救急要請を受けて消防車が出場することがありますが、これはPA連携や救急支援活動と呼ばれるものです。Pは消防ポンプ車(Pumper)、Aは救急車(Ambulance)を指します。消防隊と救急隊が連携して救急活動にあたるというものです。

 救急隊は通常、3人1組で活動しますが、3人では手が足りなくなることがあります。

 例えば多くの救急資器材が必要になる場合や、足場が不安定な山道だったり狭い階段だったりと搬送しにくい場所、安全の確保が必要な事件・事故、野次馬の整理に追われる繁華街などの現場では、救急隊員3人だけだと活動が難航することがあります。

 このような状況が通報の時点で想定される場合、消防隊も駆け付けるようにしているのです。

 また、救急隊がすぐ現場へ向かうのが難しいとき、代わって近くの消防隊が先に駆け付けるケースもあります。

 総務省消防庁の『令和3年版 消防白書』によると、2020年の全国の救急出動件数は593万3277件でした。これは平均すると1日およそ1万6211件で、約5.3秒に1回の割合で出動したことになります。

 この救急出動件数は、2020年は前年から1割ほど減ったものの、長期的に見ると高齢化を受けて増加傾向が続いており10年前と比べると約8.6%増に。

 一方の救急隊もそれにあわせて増設が続いていますが、10年前と比べると約7.6%増にとどまっています(2021年は5302隊)。

 言うまでもありませんが、救急隊員も救急車も数に限りがあるのです。

 その上、現在は、新型コロナウイルス感染症の流行で受け入れ病院の選定に時間がかかる「救急搬送困難事案」も増加。救急隊は搬送を終えるまで傷病者に付きっきりとなるため、昼夜を問わず“出ずっぱり”の状態になることもめずらしくありません。

 PA連携は、そんな多忙な救急隊の負担を軽減し、かつ、傷病者のもとにいち早く駆け付ける取り組みなのです。

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