東京都の「軽自動車税に提言」から1年… 実は「自動車関連の税収」が足りていない? 賛否ある日本の税制問題のいま
税収が足りない?東京都の実態とは
こうした都税調の提言に対して、多くのユーザーは批判的な意見を示すかもしれません。
これまで、さまざまな税制優遇施策によってBEVやFCVの普及を促進してきたにもかかわらず、車体重量や走行距離によって課税されるのであれば、結局のところ「とりやすいところからとる」という姿勢と見られるかもしれません。
しかし、都税調によれば、道路の新設維持補修などに関わる自動車関連の歳出は、自動車関連税による税収を大きく上回っており、少子高齢化による人口減少が予測されるなかで、既存の税制では将来の税収はさらに低下するといいます。
具体的には、2016年の決算額における東京都の自動車関連の税収は約3.4兆円ですが、道路の新設や維持補修に対して約4.1兆円、交通安全対策に対して約1.1兆円、救急に対して約0.2兆円と、合わせて約5.5兆円の行政サービス費用が発生しています。
さらに、電動化や自動運転化が進むなかで、道路の白線標記の品質維持などの仕組みづくりや、充電設備の充実といったインフラ整備など、新たな費用負担が発生することも予測されています。
「受益者負担」の原則にのっとれば、こうした費用は自動車ユーザー負担すべき性格のものであり、自動車関連に対する増税の根拠となっています。
自動車関連の税金は、国税や地方税の双方にまたがるため非常にわかりにくいという課題はありますが、今回の都税調の報告書を見る限り、自動車ユーザーに対するさらなる増税は避けられないようです。
※ ※ ※
今回の提言によって、東京都の自動車関連税制が、すぐに大きく変化するということはありません。
重要なのは、こうした自動車税制の見直しは20年から30年といった中長期的な視点に基づいているものです。
過去20年間でクルマの電動化が大きく進んだように、次の20年でクルマを取り巻く状況は大きく変化することはいうまでもありません。
それに対して、現在の視点で批判してしまうと議論は噛み合いません。
自動車関連の税制は、すべての自動車ユーザーが考える必要のある大切な課題であるからこそ、正しい前提に基づいた議論が求められています。
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