ホンダが新型小型モビリティ世界初公開! カメラだけで自動運転!? 会話を理解する「CI技術」がスゴすぎる!
ホンダ独自のAI技術である、協調人工知能「Honda CI」を活用したマイクロモビリティを世界初公開しました。人、機械、社会の共働/共生をサポートする技術について体験しました。
ホンダの「CI マイクロモビリティ」ってナニ?
ホンダがさまざまな「CI マイクロモビリティ」を世界初公開しました。
このCIとは、コーポレーティブ・インテリジェンス(協調人工知能)を指しますが、ホンダCIの目的は、いつでも・どこでも・どこへでも・人とモノの移動を交通事故ゼロ・ストレスフリーで実現することです。
ホンダCIを搭載したマイクロモビリティ(小型移動体)とは、いったいどんなものなのでしょうか。茨城県常総市に設置した簡易テストコースで体験しました。
最初に見たのは、搭乗型マイクロモビリティ「CiKoMa(サイコマ)」の一人乗り用です。
今回公開されたモデルは実験車両なので、一人乗りでもかなり小ぶりなイメージ。車内をのぞくと、機材が満載されている状態でした。
デモンストレーションでは、屋外のカフェスペースを想定して、そこに数人の男女がテーブルでコーヒーを飲んでいたり、自販機や郵便ポストがある周辺で人が歩いていたりするなど、街中の風景を再現。そんな状況で、スマホでサイコマに呼びかけて、迎えに来るように話しかけます。
すると、サイコマはテーブルなどの隙間を抜けて走り、スマホで呼びかけた人の近くまで来て、実際に自分を呼んだのはその人かどうか確認する発話をします。
それから「あっちのほうで待っていて」と指さすと、「あっち」という曖昧な表現も理解しながら、さらに移動していきます。
また、その周辺は駐車場でクルマが止まっている状態なので、そのクルマが動き出すリスクや周辺で動くクルマに対するリスクなども考慮して、「三角コーンの前で待っていたい」と提案してきます。
ここで重要な技術は、意図理解(いとりかい)とコミュニケーション技術です。まるで、人と人が会話としているように、人とサイコマが言葉や身振りでコミュニケーションがとれるのです。
そうして視点でデモンストレーションを振り返ってみると、まず「意図のキャッチボール」をしているのが分かり、次に対話のなかから指示をした人を特定する機能があります。
さらには、経験や社会におけるマナーなどを取り込み、指示をした人に対して新しいやり方を提案したり、または交渉したりする機能もあるのです。
言語とジェスチャーを理解するコミュニケーションは、まさに“人と人との関係そのまま”といった感じです。
また、自動運転の技術については、車道のように区画線や縁石などがないオープンスペースでも、障害物との距離や物体の構造を立体化して、走行可能なエリアを割り出しながら走っています。つまり、地図情報には頼っていないということです。
こうした一人乗りのサイコマを実用化した場合のイメージがCGで紹介されましたが、まるでタクシーを呼ぶようにサイコマを呼んで、目的に到着したらその場で乗り捨てるシーンになっていました。
犬みたいに付いてくるマイクロモビリティロボットも開発
次に体験したのは、「リアルタイム道路構造理解機能」です。
実験車両は、以前にホンダが量産を目指して研究開発していた、前後2人乗りの超小型モビリティ「MC-β」をベースに、ルーフの前後左右に単眼カメラを装備したもの。実際に運転席に座って、テストコースを走ってみました。
こちらも、一人乗りのサイコマと同じく地図情報に頼らない自動運転機能ですが、設定は車道です。車道の場合、周囲の構造物、交差点、カーブなどの位置関係や、ほかの車両や人を認識して走ります。
とても興味深かったのが、右手で操作する小さなジョイスティックです。これを交差点の手前で右、または左に一定時間傾けると、自動運転での経路がドライバーの意図によって変更されるのです。
こうした形で、自動運転と手動操作がコラボするケースは筆者(桃田健史)として初めてで、とても新鮮な体験になりました。
これら2つの実験車両での考え方を融合したのが、サイコマ4人乗りモデルです。
ゴルフカートを改良し、バッテリーにはホンダが電動二輪車向けなどで既に量産化しているモバイル・パワー・パック(MPP)を4つ装着。航続距離は20kmから30kmを想定しています。
もうひとつ体験したのが、マイクロモビリティロボット「WaPOCHI(ワポチ)」です。ポチというと、日本では犬に対する伝統的な名前であり、イメージとしては人の後ろにゆっくりとついてくるロボットとったかんじです。
ワポチは前後のステレオカメラと両サイドの単眼カメラによって、自車周辺のほぼ360度の状況を把握する機能がある前二輪・後ろ1輪の三輪自動運転ロボット。
静脈認証で特定したユーザーを、人混みでも見失わずしっかりとフォローし、前後方向では8~10メートルほどの認識能力があります。
ユーザーを追尾する途中であいだにほかの人が横切っても、記憶した特徴からユーザーを割り出して追尾を再開してみせました。
こうした各種の実験車両を使い、常総市内の2か所の施設で実証試験がおこなわれることになっており、「水海道あすなろの里」では2022年11月から、サイコマ4人乗りモデルで、地図情報のない環境での協調運転技術について研究を進めます。
また、2023年春に開業予定の、産業・農業・観光の複合施設「アグリサイエンスバレー」では、サイコマ4人乗りモデルとワポチでの実証を実施します。
こうした実証実験を通じて、ホンダとしては、ホンダ安全理念「セーフティ・フォー・エブリワン」と、環境・安全ビジョン「自由な移動の喜びと、豊かで持続可能な社会の実現」を目指します。
また、常総市は、人口減少や若者の市外への流出、少子高齢化、農業など地域産業の後継者不足、そして公共交通機関の脆弱さなど、さまざまな社会課題を抱えている状況です。
そうしてなか、2023年春開業予定のアグリサイエンスバレーをひとつのきっかけとして、
ホンダとの連携も含めて、農商工業連携×AI(人工知能)による6次産業を呼び起こす「AIまちづくり」を推進しているところです。
ホンダと常総市とのコラボからどのような社会実装が生まれるのか、今後の動向に大いに期待したいと思います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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