頼もしい存在! 「災害時に温かいご飯が食べられる!」 炊き出し専用車が凄い! 誰もがうれしい「野外炊具1号」の特徴とは

日本を守る存在の自衛隊ですが、災害時に派遣される光景も度々見受けられます。そうした際に活躍している「野外炊具1号」とはどのような存在なのでしょうか。

「野外炊具1号。誰もがうれしいトレーラー」

 自衛隊の車両といえば、戦車や装甲車など戦闘時に活躍するもののイメージが強いですが、その裏方でもさまざまな車両が存在しています。
 
 そうしたなかで日本の防衛以外でも一般人が目にする機会があるものとして「野外炊具1号」なるものがありますが、どのような特徴があるのでしょうか。

「野外炊具1号」を使って調理する様子。(画像:航空自衛隊)
「野外炊具1号」を使って調理する様子。(画像:航空自衛隊)

「腹が減っては戦ができぬ」。空腹では良い仕事ができないというのは古今東西の真理です。

 軍隊では食事は士気ひいては戦闘力にも直接影響しますので、部隊指揮官は作戦を立てるにも食事の段取りには心を砕きます。

 しかも何でも配食すればよいというものでもなく、その質と量も大切です。

 野外の厳しい環境で行動する隊員にとって温かい食事が提供されることは代えがたい活力源になります。

 そんな活力源を提供する車両が「野外炊具1号」。いわゆるフィールドキッチンで災害派遣では被災地で炊き出しにも活躍します。

 外見は何やら四角い機材がいくつか載っている2輪のトレーラーで自衛隊トラックやジープと同じ濃緑色に塗装されて厳つい外見です。

 しかし灯油バーナーを備えた6個の釜があり、カッター、皮むき器、発電機とコンプレッサー、冷蔵庫も備え、炊く、揚げる、蒸すができるマルチなクッキングマシンとなっています。

 小柄ですが1台でごはん、汁もの、おかずセットを1個中隊約200人分が作れます。

 すべての釜を炊飯に使えば最大600人分のごはんも炊けますので、とにかく緊急に多くのおにぎりというニーズにも対応できます。

 最近はキャンプが流行りで、野外のクッキング用品は「ゆるキャン」でも使えるように豊富で便利になっています。

 しかし野外炊具1号は戦車や大砲と同じれっきとした防衛装備品で、団体キャンプ用クッキングマシンというわけではありません。

「はじめちょろちょろ中ぱっぱ、じゅうじゅう吹いたら火をひいて、ひと握りのワラ燃やし、赤子泣いてもふた取るな」と、昔はいわれていた、薪などをくべて火を起こし、鉄製の釜(かま)で米を美味しく炊くためのレシピです。

 コメは日本人の主食といわれていますが、自動炊飯器に頼らず炊飯できる人はどれ位いるでしょうか。

 野外炊具1号での灯油バーナーを使った炊飯にはコツと熟練が必要です。

自動で炊飯できる機能はなく蓋も開けられないので匂いを嗅いで、長年のカンで火力を調整し炊きあがりを判断するといいます。

部隊のみんなが楽しみにしていた温食がべちゃべちゃご飯やおこげでは士気に関わります。

 キャンプ初心者は火を起こすのに苦労しますが、野外炊具1号の灯油バーナーも一筋縄ではいきません。

 種火を付けた後、ガソリンと灯油と空気の3つのバルブを操作して火力を調整するのですが、気温や天候にも影響されるので火の色を見ながらコツと熟練が必要で、これを錬成するのも訓練の一環となる位です。

 いかにも時代遅れですが、単純な機構なので厳しい環境でも故障しにくいという防衛装備品ならではの堅牢さが特徴です。

 市販のコンロの様に電化して灯油バーナーの点火や火力調整を簡単にした野外炊具1号(改)への更新が進んでいますが、電子部品が多くて耐水性が劣り故障しやすくなったという声もあります。

 故障してごはんが炊けませんでしたとなると部隊は崩壊しかねません。

 堅牢さか扱いやすさかという問題は、野外炊具1号に限ったことでなく電子化が進んだ最近の装備品全般にいえることかもしれません。

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