なぜクルマは「時速180キロ上限」から変わらない? 高速道は時速120キロに引き上げも… スピードリミッターに変化無い理由とは

2019年以降、一部の高速道路では最高速度が120km/hまで引き上げられています。その一方でクルマのスピードリミッターの上限速度も引き上げになることはあるのでしょうか。

高速道路の上限速度は120km/hに…クルマのリミッター上限の変更は?

 現在、高速道路の一部区間では最高速度の引き上げがおこなわれています。
 
 そのような背景にともなって、クルマのスピードリミッターの上限速度が引き上げになることはあるのでしょうか。

高速道路では一部120km/hまで上限が引き上げられたが…クルマのスピードリミッター「180km/h」は変わらないのか?
高速道路では一部120km/hまで上限が引き上げられたが…クルマのスピードリミッター「180km/h」は変わらないのか?

 長らく100km/hが最高速度となっていた日本国内の高速道路ですが、現在では120km/hが最高速度となっています。

 最初に最高速度を120km/hに引き上げたのは、新東名高速道路の新静岡ICから森掛川IC間(約50km)で2019年のことです。

 その背景には、比較的渋滞の発生が少ないことに加え、死傷事故や1km当たりの交通事故率が低いことなどが理由となっています。

 同様に、東北自動車道の起点である川口JCTから宇都宮IC間も2017年から段階的に最高速度が引き上げられ、2020年に最高速度が120km/hとなっています。

 なお、東関東自動車道(千葉県)の一部でも、最高速度110km/hへの引き上げをおこなっており、試験運用ののちに120km/hに引き上げる予定としています。

 このように、引き上げがおこなわれている傾向にある高速道路の最高速度ですが、クルマの性能的には120km/h以上の速度を出すことも可能で、実際に国産乗用車のスピードメーターを見てみると、180km/hまでの数値が表示されているのが一般的です。

 このことから国産乗用車には、おおよそ180km/hまで出すことができるほどの性能が備わっていることがわかりますが、一方で、それ以上の速度は「スピードリミッター 」によって制限されています。

 スピードリミッターは速度制限装置のひとつで、一定の速度まで加速した際に、燃料噴出をカットするなどして速度をセーブする仕組みが一般的です。

 スピードリミッターは、メーカーの自主規制によって搭載されたものとなっており、法令的に速度や搭載が義務付けられているものではありせん。

 そんなスピードリミッター搭載の背景には、交通安全の促進が挙げられます。

 スピードの出しすぎの危険性については、各都道府県の警察も強く呼びかけており、例えば神奈川県警では以下のように注意喚起しています。

「スピードを出し過ぎると、衝突時の衝撃が大きくなり、重大事故になる可能性が高くなります。

 また、カーブで曲がりきれずに対向車線にはみ出したり、急な飛び出しに気付いても止まれなかったり、多くの危険が潜んでいます。

 法定・指定速度を守り、安全な速度で運転しましょう」

 さらに、大阪府警察でも「速度を出すと、視野が狭くなり危険の発見が遅くなります」と啓発し、速度超過ありとなしの場合では、死亡事故へ繋がるリスクが9倍になると説明しています。

 死亡事故のリスクを少しでも低減させるためには、スピードの出しすぎを抑える必要があり、スピードリミッターは、それを抑制するための最後の砦となっているのです。

 このように、スピードの出しすぎを抑制するために、おおよそ180km/hの速度が上限とされているスピードリミッターですが、高速道路の最高速度引き上げにともない、上限が引き上げられる可能性はあるのでしょうか。

 そもそもスピードリミッターの上限が速度がおおよそ180km/hとされている理由には、スピードリミッター搭載当時の自動車技術が関係しているという説もあります。

 当時は、高速道路の最高速度が100km/hとされており、上り坂の勾配は最高で6%となっていました。

 当時の自動車の技術では、100km/hの速度を維持して勾配が6%の坂道を登るには、平坦路で180km/hの速度を出せる性能をクルマに備える必要があったとされており、スピードリミッターが180km/hに設定されたというのです。

 これはあくまでも俗説のひとつですが、こうした背景を考慮すると、自動車技術が進歩した現在では、スピードリミッターの速度をいま以上に引き上げる必要性はなく、安全運転の観点からみても、上限が引き上げられることはないでしょう。

 なお、スピードリミッターの表示としては、グローバル展開している一部の車種で200km/hや260km/hなどとなっている場合もあります。

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