トヨタグループ「日野自動車」に何が起きた!? 「上にモノがいえない」異常な企業風土 エンジン不正の調査報告からみえたこと
「上意下達」「パワハラ」が横行… 認証不正は日野の「風通しが悪い企業体質」が原因!?
調査報告で、日野の組織体系や、商品の企画、開発、実験、認証などのプロセスについて詳しく触れています。その中で、”不正の舞台”となったのが、パワートレイン実験部であるとしています。
同部に従事する人は、業務の経験と高い専門性が要求されるために人事異動も比較的少なく、社内でもパワートレイン実験部は”ブラックボックス化”してしまい、そのため様々な不正行為が継続してしまったと分析しています。
問題なのは、パワートレイン実験部から出たデータについて、品質保証に関する部署の認証に対するチェックの甘さ(または行っていない)など、社内のクロスチェック機能が働いていなかった点です。
また、不正が日野全体としての組織的な行為だったかについては、パワートレイン実験部の担当役員や、社長などの経営陣が不正の事実を把握した証拠は見つからなかったとしています。
だからといって、本事案をパワートレイン実験部や、関与した個人を非難するような声が多いかといえば、全従業員アンケートの中では「必ずしもそうではない」、とのことです。
多くの日野従業員が感じていたことは、日野全体の企業風土や企業体質に根本的な問題があるという点です。
調査報告書では、今回の問題の真因を大きく3つ挙げています。
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1.みんなでクルマをつくっていないこと
2.世の中の変化に取り残されていること
3.業務をマネジメントする仕組みが軽視されていたこと
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一般ユーザーの視点では、にわかには信じがたい言葉が並んでいますが、これが日野の実態であるということでしょう。
また、特別調査委員会の榊原一夫委員長が会見の中で、何度も「上意下達の気風が強過ぎる」という言葉を使ったことが印象的でした。
調査報告書の中でも、「上に物をいえない」「できないことをできないと言えない」風通しの悪い組織になっていたと分析しています。
さらに、従業員アンケートからは「日野のパワーハラスメント体質を問題視する回答が数多く寄せられた」として「日野は、残念ながら、パワーハラスメントに対する社会の認識の変容に付いていけなかったために、結果として、古くから社内の一部に蔓延るパワーハラスメント体質をいまだに抱えているように思われる」と、かなり厳しく批評しています。
日野はすでに、一連の認証不正に対する再発予防策を発表していますが、調査報告書にあるように、問題の本質は極めて根深く、従業員の意識改革を伴い企業として再編するためには今後、かなりの年月が必要になりそうです。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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