自動ブレーキ、約半数が誤解 クルマの「先進技術」はかえって危険?
現状、「絶対に止まる」は夢物語
「自動ブレーキ」は「ブレーキを作動させる」だけで、いわゆる「自動運転」とは異なります。止まるか止まらないかは、速度とタイヤと路面の摩擦、クルマと障害物との距離の関係でケースバイケース。どんなに優れたブレーキでも、100km/hで走るクルマを10mで止めることはできません。路面が濡れているなど滑りやすければ、さらに止めるのは難しくなります。これは物理法則の限界です。
また、ASVはまだまだ進化の途中である技術です。NASVA(自動車事故対策機構)が公開している、クルマの安全性能を検査するJNCAP(自動車アセスメント)の試験結果においても、ASVが確実に衝突を回避するものではないことが示されています。将来、完全自動運転が実現できれば、「必ずぶつからないクルマ」も実現できるかもしれませんが、現状において「絶対に止まる」は夢物語なのです。
加えて、「自動ブレーキ」にもいろいろな種類があります。ざっくりいえば、低い速度でしか作動しないものと、高い速度まで対応するものがあるのです。カタログの説明をすみずみまで読むと、「50km/h以上は作動しません」や、「10km/h以下では作動しません」といった「ただし書き」を見つけることができるでしょう。低速度帯でのみ作動する自動ブレーキでは、普通自動車の一般道における法定速度である60km/hの走行に対応できず、逆にノロノロの渋滞では効かないシステムもある、というわけです。
さらに、使うセンサーごとに得手不得手もあります。たとえばスバルの「EyeSight(アイサイト)」はカメラだけなので、安価でコストパフォーマンスに優れていますが、視界の悪い逆光や霧が苦手です。こうしたシステムの死角をなくすために複数のセンサーを使っているクルマも見られますが、もちろん価格に反映されるため、すべてのクルマでそのようにすることは現状、難しいといえるでしょう。
つまり、「自動ブレーキがあれば、いつでもどこでも大丈夫」ではないのです。ところが前述のように、約4割もの人が「自動ブレーキ」のことを誤解、あるいは過信ともいえる認識をしています。これは憂慮に値する事態です。