なぜ「100万円以下」の軽自動車減った? コンパクトカーとの立ち位置は逆転? 今後の軽規格はどうなるのか
この30年で軽自動車に対するイメージは激変しました。かつては「安いクルマ」の代名詞であった軽自動車ですが、最近では100万円以下で購入できるものはほとんどなくなり、むしろ200万円以上するものがめずらしくなくなってきました。今後さらにコンパクトカーとの差別化が難しくなっていく印象を受けますが、果たしてどうなっていくのでしょうか。
日本独自の「軽自動車」と5ナンバー車「コンパクトカー」の立ち位置は入れ替わるときが来る?
かつて軽自動車といえば、安全面では登録車と比べてやや見劣りし、同時に低コストなどによる「安いクルマ」の代名詞でした。
最近では100万円以下で購入できる軽自動車はほとんどなくなり、むしろ200万円以上するものが珍しくなくなっており、コンパクトカー(5ナンバー車)との差別化も年々難しくなっています。
そうした状況において、軽自動車とコンパクトカーの立ち位置に変化は無いのでしょうか。

日本のモータリゼーションを促進するという、高度成長期における軽自動車の成り立ちを考えると、軽自動車が安価なのは当然といえば当然ですが、近年ではそうしたイメージが変わりつつあります。
2021年、日本でもっとも売れた軽自動車はホンダ「N-BOX」ですが、エントリーグレードで144万8700円、最上級グレードで217万2500円です。
同じく2021年に登録車でもっとも売れたトヨタ「ヤリス」のエントリーグレードは139万5000円、最上級グレード(ガソリン車)の価格は216万9000円となっており、わずかではありますが軽自動車であるN-BOXのほうが価格が高いことがわかります。
また、100万円以下で新車購入できる軽自動車は、かつてはそれなりに選択肢があったものですが、商用車を除けば現在ではダイハツ「ミライース」とスズキ「アルト」、そしてそれらのOEM車というように数えるほどしかありません。
なぜ、軽自動車は「上級志向」へと変化していったのでしょうか。また、今後100万円を下回るような軽自動車が登場する可能性はあるのでしょうか。
一部のスポーツモデルなどを除けば、上級志向の軽自動車というトレンドを作ったのは、やはりN-BOXといえます。
2011年に登場したN-BOXは、当時の人気を誇っていた軽スーパーハイトワゴンのダイハツ「タント」を直接のライバルとし企画されました。
ホンダ「フィット」などで定評のあった「センタータンクレイアウト」を採用するなど、ライバルよりも室内空間が広いことなどを武器に、発売当初から爆発的な売れ行きを記録し、現在に至るまでホンダの主力モデルとしての地位をほしいままにしています。
N-BOXの勝因のひとつに、既存の軽自動車の枠組みにとらわれない柔軟な発想がありました。
登録車と同等の装備や機能に加え、新開発されたエンジンによりパワフルな走りを兼ね備えているにもかかわらず、税金などが登録車に比べて割安であったことから、コンパクトカーなどからの乗り換えが多かったといわれています。
ただ、この背景には年々厳しくなる安全規制や環境規制へ対応するために、車両価格を上げざるを得ないという事情もありました。
安全装備でいえば、衝突被害軽減ブレーキやオートヘッドライトは義務化されており、また、厳密には義務化されてはいないものの、エアバッグもほぼすべてのモデルに搭載されていることを考えると、搭載しないわけにはいかない装備のひとつです。
「1銭」という単位までコストにこだわるという軽自動車の開発では、こうした装備を新たに搭載することは、すなわち車両価格の上昇を意味します。
さらに、ユーザーが軽自動車に求める重要な要素が低価格(低コスト)であるため、単純に車両価格が上がったように見せるのは得策ではありません。
そこで、N-BOXではクルマそのものを上級志向へと転換させることで、クルマとしての魅力が上がったことを強調したというわけです。
N-BOXの成功に引っ張られるように、その後多くのメーカーが上級志向の軽自動車を発売、現在もその傾向は続いています。
実際にN-BOXを販売しているホンダ販売店のスタッフは次のように話しています。
「N-BOXは標準仕様とカスタム仕様それぞれで異なる需要に対応している点などにより、幅広いお客さまから支持されています。
ラインナップとしてはN-BOXとフィットを比較されることも多く、普段の買い物車として使われる人であれば、軽自動車も登録車もあまり変わりないようです。
その検討の末にN-BOXを契約される人もおり、軽自動車で十分と考えるお客さまからすれば、コンパクトカーを購入されるメリットはあまりないようです」
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このように、かつては安全面で不安視されるほか安いというイメージが定着していた軽自動車ですが、現在では先進安全機能も登録車並となり、質感でもコンパクトカーを凌駕するモデルも登場。
実際に日産が発表した軽EV「サクラ」では軽自動車を超える質感や先進安全機能を採用しており、コンパクトカー以上のステータス性さえ持っています。























































