なぜ「100万円以下」の軽自動車減った? コンパクトカーとの立ち位置は逆転? 今後の軽規格はどうなるのか
100万円以下の軽自動車はもう不可能?可能性があるとすれば…
では、今後はかつてのように、100万円以下の軽自動車が多く登場するようなことはないのでしょうか。
物価の高騰やインフレといったマクロ経済的な要因は無視したとしても、やはり年を追うごとに厳格化される安全規制や環境規制に対応するには、さまざまな装備や機能を追加する必要があり、その価格は車両価格に反映することになります。
安全性能や環境性能に関係しない快適装備を可能な限り取り払えば可能かもしれませんが、そうしたクルマを購入する人はごく少数派でしょう。
また、大量生産をすることでコストを下げるという戦略も考えられますが、軽自動車は日本独自の規格であるうえ、日本の人口は減少傾向にあることを考えると、それも現実的ではありません。
一方、可能性があるとすれば、軽自動車規格のまったく新しいマイクロモビリティが登場する場合です。
あくまで近距離・少人数移動を前提としたマイクロモビリティで、電気自動車(EV)のようにこれまでの軽自動車の枠組みにとらわれない製品であれば、「100万円以下」というのは決して夢ではないかもしれません。
実際、中国ではおよそ50万円という低価格の小型EVである五菱(ウーリン)の「宏光mini EV」が2021年の中国新車販売台数で2位にランクインしています。
もちろん、既存の軽自動車と同等にとらえることはできませんが、あくまで「100万円以下で買える軽自動車規格のクルマ」という点では、宏光mini EVは多くの示唆を含んでいるといえます。

そうしたなかで、トヨタでは軽自動車の一種となる「超小型モビリティ」に区分される電気自動車「C+pod(シーボット)」をリース販売していますが、実際の反響についてトヨタの販売店は次のように説明しています。
「シーボットはリース専用車として取り扱いをしており、主な用途としては身近な移動を目的としたもので、現状では軽自動車同様の車検/税金となっています。
すでに契約されたお客さまからは、『小さく扱いやすい』『近距離移動がメインだから充電は週末だけの1回で済むので楽』という声を頂いており、新しい物好きな人からは注目されています。
一方で車両価格が165万円からとなっていることもあり、軽自動車やコンパクトカーのリース契約と比較されるとまだまだ普及するには難しいようです」
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軽自動車という枠組みができておよそ70年、これまでも法制度の見直しがおこなわれてきましたが、その根本的な部分は1998年に「全長・全幅の拡大」が改正されて以降、長らく変わっていません。
現在の枠組みは「排気量660cc以下、長さ3.4m以下、幅1.48m以下、高さ2.0m以下の三輪および四輪自動車」と定められています。
電動化が進むことが予想されるこれからの時代、軽自動車という枠組みそのものを見直す必要があるといえますが、かつての取材時に全軽自協は次のように説明していました。
「過去に改正された1998年では安全面の観点から規格が変更されていますが、20年以上経った現在でも現行の規格が安全上で問題になったという話は聞いていないため、当面の間では規格の見直しはおこなわれないと思われます。
また、これまでの間に、自動車メーカーや関係各所から『規格の見直し』に関する要望などは聞いておりません」
こうしたこともあり、当面の間は軽自動車の枠組みは変わらなそうですが、同時に小型車(5ナンバー車)との差別化も議論していかなければならないでしょう。
Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明
自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。























































