行き着く先にあるパラツインロードスポーツ ホンダ「HAWK 11(ホークイレブン)」
「走りの楽しみを忘れない大人のバイク」であることを象徴したFRP製ロケットカウルを採用し、ベテラン世代の記憶に残る“ホーク”の名を冠したニューモデル「HAWK 11(ホークイレブン)」に試乗しました。
よくぞ出た国内向け!! ホンダから、ベテラン層へのメッセージ
流れる景色がカウルやタンクに映り込む。コーナーをひとつずつ駆け抜けていくたびに、歓びがこみ上げてくるではありませんか。スペック的になにかが飛び抜けて凄いわけではないのですが、バイクとの一体感が味わえ、操る楽しさがあるのです。
開発陣はこう言います。「楽しさは、数字じゃない」「バイクを乗り継いできた大人の革ジャンが似合うスポーツモデル」と。
国内二輪メーカーは昨今、グローバルな市場へ向けたモデルに注力し、また業界の若返りを図るため、若年層に向けた製品開発に積極的ですが、「HAWK 11(ホークイレブン)」は日本市場専用モデルで、アラフィフとなった筆者(青木タカオ)の年代、そしてさらにベテラン層に向けたオートバイに仕上がっているのです。
レーサーレプリカ全盛を知るオトナたちへ!!
カタログにも記される「楽しさは、数字じゃない」という言葉は、スペック至上主義で1PSでもライバルを上回ることが重要視されたレーサーレプリカブーム全盛期を知るオトナたちへ向けられたもの。
モデルコンセプトにも「若い頃から趣味としてバイクを乗り継ぎ、いつの間にか“上がりのバイク”が視野に入る年齢になった」とあります。
自分がターゲット層のど真ん中にあることを感じつつ、「いやいや、まだまだ上がりませんよ」と革ジャンを着て独り言をつぶやき、跨ってみますと、これがとてもしっくりとくる。
セパレートハンドルが前傾姿勢をもたらしますが、レーサーレプリカのような窮屈さはなく、スポーツライディングするには丁度良い。
シート高は820mmで、身長175cm、体重67kgの筆者の場合、かかとまでしっかりと地面に届くのは片足を下ろしたときのみ。サスペンションはコシのあるセッティングで、乗車1Gでは沈み込みはわずか。
足つき性を優先するなら、ダイヤル式のプリロードアジャスターでソフト方向へ緩めることもできますが、ハードに攻め込んだときを考えると標準値がベター。両足を地面に下ろせばカカトが浮き、ユーザーに媚びない、若干の腰高感がまたワクワクせさせてくれます。
“上がりのバイク”って、ナンダ!?
こうしたスポーツライディングに適したアグレッシブなライディングポジションは、自分がイメージする“上がりのバイク”とは少し異なりますが、時代が変わったのでしょうか。
ホンダでもし“上がる”なら、「ゴールドウイング」といった重厚感のあるプレミアムツアラーを想像しがちなのは、もはや古い発想なのかもしれません。
実際、先輩ライダーたちが乗っているバイクを見ると、大型車から再び軽量モデルに戻ってくるということがあります。そういう意味では「HAWK 11」はリアルな選択なのかもしれません。
しかし、いずれにせよ自分はまだ上がらないので、「HAWK 11」が果たして“上がりのバイク”なのかどうかは、もう少し先にまた考えたいと思います。
テイスティな270度クランク・パラレルツイン
さて、「CRF1100L アフリカツイン」譲りとなる排気量1082ccのOHC(ユニカム)4バルブ、直列2気筒エンジンは、「NT1100」では「デュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)」仕様のみの設定としていましたが、「HAWK 11」では6速マニュアルトランスミッションのみ。
「NT1100」に備わっているクルーズコントロールも採用せず、純粋に(アナログ的に!?)走りを楽しんで欲しいという開発陣のメッセージを感じます。
270度クランクが生むパルス感は「レブル1100」ほど強調されてはいませんが、心地良い鼓動は健在です。サイレンサーは「NT1100」と共用するものの、41.5度というより深いバンク角を確保するために取り付け角度を上げたため、ライダーの耳にはより低音の効いたパラツインサウンドが伝わります。
大人味なハンドリングに感激!!
ライディングモードは「スポーツ」「スタンダード」「レイン」そして「ユーザー」の計4モードで、「スポーツ」でもレスポンスが唐突すぎるなんてことはありません。扱いやすく、アクセルをどんどん開けていきたくなるのでした。
トルクバンドが広く、どこからでも車体を押し出していきます。「レブル1100」や「CRF1100L アフリカツイン」もそうですが、コーナーの立ち上がりでアクセルを大胆に開ける楽しさがあるのは、駆動力を路面へしっかりと伝える不等間隔爆発ならではのトラクション性能の良さがもたらすもので、冒頭にも書いたように、コーナーを抜けるたびにこの上ない気持ち良さを感じるのです。
コーナーアプローチもワクワクさせるもので、まさにベテラン向けのハンドリング。積極的に乗り手が入力すると車体は素直に反応し、安定志向でありながらクイックな切り返しにも従ってくれて、軽快感と落ち着きの良さが同居しています。
新型車とは思えない熟成を感じさせるディメンションは、キャスター角を「NT1100」比で1.5度、「アフリカツイン」比で2.5度立てた25度に設定されたもの。その絶妙さを知ることができたのは、ハイティーンの頃にとびきり苦くて旨いブラックコーヒーの味を知ったみたいな、大人の階段をひとつ上がることができたかのような歓びがあるのでした。
試乗を終える頃には、考えることを諦めていた“上がりのバイク”の意味が、少しだけわかった気がしてくるのでした。
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ホンダ新型「HAWK 11」は2022年9月29日発売予定、価格(消費税10%込み)は139万7000円です。
提供:バイクのニュース
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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。
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