「何を売れば良いのか…」ハリアー・シエンタなどトヨタ人気車が受注停止!? 納車遅れで新たな問題も
今後は新車の発売方法が変わる可能性も
今後の見通しを考えると、各種パーツの供給不足による納期遅れは収まりそうにありません。海外では、新型コロナウイルスによる都市封鎖などが今でも続いているからです。
納期遅延や受注の停止が今後も長引くと、販売店のコメントにあった通り、ユーザーが納期の短い他社のライバル車を購入する心配も生じます。
これを受けて販売店からは「今後は新車の発売方法が少し変わるようです。メーカーが発信する新型車関連の情報は従来よりも早く販売店へ伝えてもらい、商談の開始時期を前倒しします。そうすれば受注を完全に停止する期間を短くできるからです」という話もありました。
確かに、「受注は終了したけどフルモデルチェンジされる新型車の情報は何も分からない」という状態が続くと、購入を希望するユーザーは不安を感じます。
「実態の分からないクルマの登場を待つくらいなら、現時点ですでに販売されているクルマで手を打とう」という判断も働くでしょう。
そのため受注開始を前倒しするのも理解できますが、その場合、メーカーはなるべく詳しい情報を販売店に伝える必要があります。
曖昧な情報だけで商談や受注を進めることは、ユーザーと販売店の両方にとって不安を招くからです。
例えば販売店のスタッフがプロトタイプに試乗する機会を用意して、従来型との違いなどをユーザーに詳しく説明できる体制を整えないと、受注開始の前倒しが顧客満足度を下げてしまうほか、他社への顧客流出も生じます。
新しい売り方では、「展示車や試乗車のない状態で商談することの不利をいかに少なく抑えられるか」が重要になるでしょう。
また商品開発も変わります。従来は高機能でコストの割安なパーツを積極的に使いましたが、今後は安定供給も重要になります。
万が一供給が滞ったときに他社製品に代替できるのか、対応を図れるのか、という汎用性も問われるでしょう。
新型コロナウイルスに基づく納期の遅延は、車両の企画、開発、製造から発売の仕方まで、自動車業界のさまざまな部分に変化をもたらすのです。
しかもそのタイミングが電動化の波と重なっているので、今まで経験したことのない試練になるかもしれません。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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