【レース現場から市販車が誕生!?】 GRが掲げる「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」とは
豊田社長が語る「もっといいクルマづくり」とは
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なぜ、GRヤリスはそこまでできたのでしょうか。
筆者(山本シンヤ)は豊田社長の「トヨタは本当にこのままでいいのか?」という問題提起に対して、モノで証明したかった……と分析しています。
これはまさに「現地現物」の精神です。豊田社長はこのように語っています。
「できないからやる……それが挑戦です。
そのためにはまず自分たちが変わる必要があります。
もちろん、今のトヨタではできないのは僕も解っています。
でも、それをできるようにするためにはどうすればいいのか。
変えるしかないですよね」
ただ、誤解してほしくないのは、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」はモータースポーツに適したクルマをつくる事が目的ではないということ。
モータースポーツの「時間軸の速さ」、「結果がすぐに出る」、「その場で解決」といった、仕事に対する意識改革が主だと筆者は考えています。
その辺りはすでにほかのクルマにもフィードバックされています。
例えばGRスープラの、登場からわずか1年での大幅改良や、2022年の6速MT追加。
さらにGR86の発売直前でのセットアップ変更などは、これまでのトヨタではありえないスピード感覚で進められました。
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レースの世界では「スタートラインにクルマを並べるまで最善を尽くす」といわれますが、それを量産車に置き換えると……解りやすいでしょう。
これまでのトヨタのルール/基準のなかで仕事をおこなうのは、ある意味「楽」だと思います。
なぜなら教科書通りにやっていけば失敗の心配はないからです。
ただ、それはトヨタの都合であり、お客様目線とはいえません。
豊田社長は「GRヤリスはトヨタでもできることの証明」と語っていますが、それはトヨタの社員に対して「常に挑戦者であれ」、「自分の限界を、自分で決めるな」ということを、モノを通じて伝えようとしていたのかもしれません。
そういう意味でいうと、筆者はモータースポーツから市販車へ……という想いの本質は、ハードよりもハートのほうが重要だと考えています。
そんなクルマに触れたユーザーは直感的に「いいクルマ」と感じ幸せになる。
つまり、トヨタの経営理念「幸せの量産」へと繋がるわけです。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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