今では当たり前の車でも当時はキワモノ!? 新ジャンルに挑んだ車3選
クルマは時間の経過とともに進化していますが、さらにニーズの変化にも対応して多様化してきました。そのため、かつてに比べてクルマのジャンルも増加しています。そこで、新たなジャンルを確立した先駆者といえるクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
新ジャンルを確立したクルマを振り返る
クルマは絶え間なく進化を続けていますが、とくに2000年代以降は技術の進歩が著しく、燃費性能や安全性能が飛躍的に向上しました。
また、時代とともに変化するユーザーニーズにも対応して、クルマのジャンルも多様化し、現在に至ります。
クルマのジャンルが増えるということは、必ず始まりとなったモデルが存在するわけですが、近年は自動車市場が成熟したことから新たなジャンルを確立するのは難しいといえるでしょう。
一方で、少し前に遡ると先駆者といえるモデルがいくつか挙げられます。
そこで、新たなジャンルを確立したクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●スバル「レオーネ 4WD 1.8GT ターボ」
スバルは1971年に、東北電力から冬季の巡回用にとのリクエストを受け、商用バンの「ff-1・1300Gバン」をベースにした4WD車を開発しました。
このff-1・1300Gバン4WDはプロトタイプといえるモデルで僅かな台数が製造されるにとどまりましたが、培った4WD技術を応用して、1972年に世界初の乗用車タイプの量産4WD車「レオーネ エステートバン 4WD」が誕生。
当時はまだ悪路走破性を重視しており最低地上高も高く設定され、まさに「レガシィ アウトバック」の原型といえるモデルでした。
さらに1975年には、同じく世界初の量産4WDセダンとして「レオーネ 4WDセダン」も登場し、生活四駆として人気を獲得しました。
その後レオーネはスバルの主力車種として1979年に2代目、1984年に3代目へとモデルチェンジしましたが、水平対向エンジンはOHVのままで前時代的な印象は否めませんでした。
そこで1984年に、改良されてSOHCとなり、最高出力135馬力(グロスを発揮する1.8リッター水平対向4気筒ターボエンジンを搭載した「レオーネ 4WD 1.8GT ターボ」を追加。さらにフルタイム4WD化も果たしました。
ターボエンジン+フルタイム4WDという組み合わせはマツダ「ファミリア GT-X」が先行していましたが、より実用的なセダン、ステーションワゴンという点ではスバルがいち早く採用したことで、後に登場した「レガシィ RS」や「インプレッサ WRX」、他メーカーの高性能4WDセダンの先駆けとなりました。
その後、レオーネはラインナップを絞ってレガシィ、インプレッサと併売されましたが、1994年に3代目をもって生産を終了し、乗用車4WDのパイオニアだったレオーネは世代交代を完了。
ちなみにレオーネの車名は、日産からOEM供給された「ADバン」=「レオーネバン」として2001年まで存続しました。
●三菱「i-MiEV」
現在、世界中の自動車メーカーはCO2排出量削減を目指してEVの開発に大きく舵を切っていますが、すでに数多くのEVが市販されています
この量産EVの先駆けだったのが、2010年から個人向けに販売が開始された三菱「i-MiEV(アイミーブ)」です。
i-MiEVは同社の軽乗用車「i(アイ)」をベースに、リアのラゲッジルーム下に最高出力64馬力のモーターを搭載。後輪を駆動するRRはiと同様のレイアウトとなっていました。
また、前輪と後輪の間のシート下に16kWhの駆動用のリチウムイオンバッテリーを搭載し、低重心化と重量物を車体中心付近に集めることに成功して、高い走行安定性を実現。
内装のデザインもiに準じており、機能的にメーターやスイッチ類が配置されていました。
発売当初は1グレードの展開でしたが、2011年には47馬力のモーターと10.5kWhのバッテリーにスペックダウンした「M」グレードを追加。価格も抑えられ従来の「G」が380万円(消費税5%込)のところ、「M」は260万円(同)と、より現実的な価格となりました。
軽自動車としてデビューしたi-MiEVでしたが、2018年には道路運送車両の保安基準改正に合わせ、対歩行者安全性強化のためフロントバンパーが85mm延長されたことから軽自動車から登録車に変更され、2021年3月に生産を終了しました。
現在、軽EVは三菱の「ミニキャブ MiEV」のみとなってしまいましたが、今春には三菱と日産が共同開発した次世代型の軽EVが発表される予定で、さらにホンダも近い将来に軽EVを発売することも明らかになっています。
●トヨタ「RAV4」
近年、世界的なブームとなっているSUVですが、その起源を遡るとクロカン車にたどり着きます。一時は日本でも人気だったクロカン車は悪路走破性の高さに特化したモデルで、普段使いには向いていない面も否めませんでした。
そこでトヨタは1994年に、一般的な乗用車に準じた基本構造ながらクロカン車に近いモデルとして、初代「RAV4」を発売しました。
外観はまだクロカン車の面影を残しながらも全体的に丸みをおびた都会的なデザインを採用。デビュー当初は3ドアボディの1タイプでしたが、1995年にはより使い勝手の良い5ドアボディの「RAV4 V(ファイブ)」が追加されました。
ボディサイズは、全長3705mm(3ドア)、4115mm(5ドア)×全幅1695mm-1760mm×全高1645mm-1660mmと、現在のSUVと比べてかなりコンパクトなサイズです。
エンジンは車格の割にはパワフルな最高出力135馬力の2リッター直列4気筒DOHCを搭載し、駆動方式はFFベースでベベルギア式センターデフを持つ本格的なフルタイム4WDを採用していました。
初代RAV4はオンロード走行を重視した新しいタイプの4WD車で、セダンやハッチバックから乗り換えても違和感のない運転感覚と、高い着座位置による取りまわしの良さから、幅広いユーザー層から人気を集めました。
まさに現在のSUVのルーツといえるRAV4はその後も同様のコンセプトで代を重ね、一時は国内市場から姿を消したものの2019年4月に現行モデルの5代目が国内で復活を遂げ、今やグローバルでトヨタのトップセラーとなっています。
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今回紹介した3車種以外にも先駆者といえるモデルは他にもありますが、なかには日産初代「プレーリー」のように、販売的には成功しなかったケースも存在します。
初代プレーリーの仕様を振り返ってみると、3列シートにセンターピラーレスの両面スライドドアと、今のミニバンの原点といえる秀逸なコンセプトでしたが、まだミニバンという言葉すら広まる前とあって、出たタイミングが早すぎました。
自動車メーカーは5年後、10年後のニーズを予測して新型車を開発するといわれていますが、それこそが新型車の難しさではないでしょうか。
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