庶民派だけど妥協していないデザインがスゴい! 1970年代に発売されたクーペ3選
近年、ニーズの変化からクーペは需要が低迷し、手頃な価格のモデルが激減。もはや絶滅が危惧されている状況です。一方、昭和の時代には、庶民的な価格のクーペが数多く存在。そこで、1970年代に発売された小型でスタイリッシュなクーペを、3車種ピックアップして紹介します。
昭和の時代に発売された小型クーペを振り返る
1990年代にミニバンが爆発的に増え、ファミリーカーの勢力図がセダンからミニバンへ一変しました。また、ここ数年は軽ハイトワゴンやコンパクトカー、そしてSUVが日本の自動車市場を席巻しています。
これらのモデルに共通するのは普段使いに適したモデルで、ミニバンや軽ハイトワゴンはリアにスライドドアを採用し、コンプリートカーやSUVは5ドアハッチバックのボディで、使い勝手に不満を漏らす人はごくわずかでしょう。
そのため、近年は2ドアクーペ、もしくは3ドアハッチバッククーペの需要が極端に低迷しており、ラインナップも激減。とくに比較的安価で小型のモデルは、もはや絶滅が危惧される状況です。
一方、昭和の時代には、庶民派の価格で秀逸なデザインのクーペが数多く存在。
そこで、1970年代に発売されたスタイリッシュなクーペを、3車種ピックアップして紹介します。
●三菱「ランサーセレステ」
三菱の現行車でエントリーモデルといえば「ミラージュ」ですが、ミラージュの誕生以前は「ランサー」がそのポジションを担っていました。
ランサーは1973年に、初代「コルトギャラン」の下位に位置するFRのエントリーモデルとして誕生。コンパクトな2ドア/4ドアセダン、ライトバンのボディラインナップでした。
そして1975年には、「ギャランクーペ FTO」の後継車として、初代ランサーの派生モデルである「ランサーセレステ」が登場しました。
外観は風洞実験を重ねて空気抵抗の低減を図ったという3ドアハッチバッククーペで、スピード感あふれるスタイリングを実現。とくにルーフ前端からリアゲート後端まで柔らかなカーブを描くラインは、美しいサイドビューを演出していました。
一方、スポーティなクーペながら広いトランクルームを確保し、リアシートを前方に倒せば広大な荷室に変わるなど、ハッチバックのリアゲートと相まって実用性も考慮されていました。
エンジンは当初1.4リッターと1.6リッター直列4気筒SOHCで、トップグレードの「1600GSR」は、ランサー譲りの最高出力110馬力(グロス、以下同様)を誇る「ソレックス」ツインキャブレター・エンジンを搭載。
その後、1979年のマイナーチェンジではフロントフェイスとリアまわりのデザイン変更がおこなわれたのと同時に、最高出力105馬力の2リッターエンジンを搭載した「2000GT」グレードが加わり、コンパクトなボディに大排気量エンジンを組み合わせたことで、北米市場でも人気となりました。
その後、ランサーセレステは1982年に一代限りで生産を終了。実質的な後継車はFFの3ドアハッチバッククーペ、「コルディア」でした。
●日産「サニー クーペ」
かつて、トヨタ「カローラ」と並び、日本の大衆車市場をけん引していたモデルが日産「サニー」です。
1966年に初代が発売され、当初は2ドアセダンからスタートして4ドアセダン、ライトバン、ピックアップトラックと、スタイリッシュなファストバッククーペが追加され、豊富なボディラインナップが展開されました。
その後も同様に複数のボディを設定したまま代を重ね、オイルショックによる省燃費車への関心が高まっていた1977年に、4代目で最後のFRモデルとなる「B310型」が登場。
外観は2代目サニーに回帰したような直線基調のシャープなデザインで、ボディバリエーションは2ドア/4ドアセダン、3ドアハッチバッククーペ、2ドア/4ドアのライトバンが用意され、1979年にはステーションワゴンの「サニーカリフォルニア」が加わりました。
ラインナップのなかでも3ドアハッチバッククーペはスタイリッシュなフォルムで、大型で三角形のリアサイドウインドウと傾斜したCピラーが、デザイン上のアクセントになっていたと同時にスピード感を表現していました。
エンジンは初代から継承された直列4気筒OHV「A型」の改良型を搭載。1.2リッターと1.4リッターの2タイプを基本に、1978年には環境性能を高めたEGI(電子制御燃料噴射)を採用し、最高出力80馬力を発揮し、上位グレードに設定されました。
さらに1980年には1.2リッターエンジンは1.3リッターへ、1.4リッターは92馬力を発揮する1.5リッターへ排気量を拡大。
サスペンションはフロントがストラット、リアがコイルスプリングの4リンクリジットアクスルで、3代目までのリアのリーフスプリングからコイルスプリングへと進化を果たしました。
また、クーペをベースにしたマシンがツーリングカーレースで活躍したこともあり、生産を終えた後に、軽量なFR車として走り好きの若者から高い支持を得ました。
そして、1981年に5代目のB11型が登場。時代の流れからFF化され、エンジンもより近代的なSOHCの「E型」にスイッチ。FFベーシックカーとして進化を続けましたが、2004年にサニーは長い歴史に幕を下ろしました。
●ホンダ「1300クーペ/145クーペ」
ホンダは1972年に、次世代のベーシックカーとして初代「シビック」を発売。優れた経済性とコンパクトなボディながらFFの恩恵で広い室内を実現し、大ヒットを記録しました。
この初代シビック登場はホンダにとって大きな転機になりましたが、それ以前はまだクルマづくりの方向性を模索していたといえます。
その代表的なモデルが、1969年に同社初となる4ドアセダンとして誕生した「1300」シリーズです。
1300は非常にユニークな空冷1.3リッター直列4気筒エンジンを搭載したモデルで、これをフロントに横置きに配置した本格的なFF車として開発されました。
そして翌1970年にはセダンと主要なコンポーネンツを共有した「1300クーペ」が登場。ラインナップはエンジンの仕様で大きくふたつに分けられ、シングルキャブで最高出力100馬力のスタンダード仕様「クーペ7」と、4連キャブを装着して最高出力115馬力の「クーペ9」で、どちらも当時の水準ではかなりパワフルなエンジンでした。
外観はセダンとの共通項はなく、ボディは曲面で構成された流麗なフォルムで、FFだったことからクーペながら良好な居住空間が確保されていました。
斬新でハイパワーなエンジンと美しいボディの1300クーペでしたが、空冷エンジンの利点である軽量シンプルな構造とはかけ離れた「二重空冷」という複雑な構造で重いエンジンは、操縦性にも悪影響をもたらしてしまい、販売は好調とはいえませんでした。
さらに、排出ガス規制の強化もあり、空冷では対応が難しいという判断もあって、1972年に車名を「145クーペ」に改め(セダンもラインナップ)、水冷1.4リッターエンジンに換装して再デビューとなりました。
ボディは1300クーペから踏襲されましたが、フロントフェイスは丸型4灯から角型2灯とモダンな印象となり、エンジンはF1参戦で培った技術を応用した機械式燃料噴射を搭載したFIグレードが設定され、最高出力90馬力を発揮しました。
しかし、初代シビックを主力モデルとして注力するため、145シリーズは1974年に生産を終了。発売からわずか2年と、短命でした。
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古くからクーペの魅力はスタイリングで、現行モデルでもレクサス「LC」や、2022年6月からデリバリーが始まる日産新型「フェアレディZ」は美しく、カッコいいフォルムといえるでしょう。
しかし、使い勝手の面では厳しいといわざるを得ず、高額なモデルならば富裕層からセカンドカー、サードカーとしての需要が見込めますが、比較的安価なモデルは趣味のクルマとして以外、需要が拡大するのは難しい状況です。
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