大真面目に作られたのが素晴らしい! 昭和の時代に誕生したスゴいデザインの車3選
クルマの外観デザインは販売台数に大きな影響を及ぼします。そのため、自動車メーカーは「奇抜なデザイン」よりも「売れるデザイン」を目指しているといえるでしょう。しかし、なかにはかなりアグレッシブなデザインを採用したクルマも存在します。そこで、昭和の時代に誕生したスゴいデザインのクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
昭和デザインの凄さが実感できるクルマを振り返る
クルマ選びの際に、見た目の第一印象で決めるという人が多いのではないでしょうか。それほどまでにクルマの外観デザインは重要な要素といえます。
「カッコイイ」や「カワイイ」などと形容されるクルマのデザインですが、正解はありません。
そのため、多くの人に好まれるデザインを目指し、各メーカーも優秀なデザイナーを雇い、時には有名なデザイン工房に依頼するなど、「売れるデザイン」の実現に奔走しています。
一方で、かつてはかなりアグレッシブなデザインを採用したクルマも存在します。
そこで、昭和の時代に誕生したスゴいデザインの国産車を、3車種ピックアップして紹介します。
●ダイハツ「ビー」
ダイハツは国内でも屈指の老舗自動車メーカーで、1907年(明治40年)に大阪を本社とした「発動機製造株式会社」の社名で創業しました。
当初は産業用や農業用の汎用エンジンの製造から始まり、2輪車の生産を経て1930年に3輪トラックの「ダイハツ号」から自動車メーカーの歴史がスタート。なお「ダイハツ」とは大阪の「大」と発動機製造の「発」を組み合わせた愛称で、1951年に現在の「ダイハツ工業株式会社」の社名となりました。
そして創立50周年を迎えた1957年に軽3輪トラックの「ミゼット」を発売し、戦後の高度成長期を背景に大ヒットを記録して、その後は小型車と軽自動車の生産を中心としたメーカーとなり、現在に至ります。
このミゼット誕生以前の1951年に、同社初の乗用車として「Bee(ビー)」が発売されました。
ビーは804ccの空冷水平対向2気筒エンジンをリアに搭載し、前が1輪、後が2輪の3輪乗用車で、4人乗りの2ドアセダンです。
それまでダイハツは3輪トラックを主力としていたことから、3輪乗用車の開発は自然な流れだったといえるでしょう。
このビーで最大の特徴だったのがフロントまわりのデザインで、当時としてもかなり斬新な曲面を多用した流麗なスタイリングとなっており、丸目2灯のヘッドライトとメッキバンパーを配置したアバンギャルドなものでした。一方のキャビンはスクエアなフォルムという対比が、かなりユニークです。
先進的なクルマでしたが一般家庭にマイカーが普及する以前とあって販売的にはまったく振るわず、わずか1年で生産を終了。正真正銘の幻のクルマとなってしまいました。
●マツダ「R360クーペ」
スバル(富士重工業)は1958年に、同社初の4輪自動車の「スバル360」を発売。庶民がマイカーを持つことが、夢から現実に変わりました。
それに追従するようにマツダ(東洋工業)も1960年に、初の4輪乗用車である「R360クーペ」を発売し、スバル360よりも低価格の30万円からとすることで、一気に販売トップを狙いました。
ボディは曲面を多用したユニークなデザインの2ドアクーペで、一見すると2シーターのスポーツカーのようですが実際は4シーターの4人乗りで、リアシートは大人が快適に乗るスペースはなく緊急用に使えるスペースでした。
また、サイドとリアウインドウはアクリルを用いてボディの軽量化が図られた結果、車重はわずか380kgを達成。足まわりはトレーリングアームの4輪独立懸架を採用するなど斬新なメカニズムで、快適な乗り心地を実現しました。
搭載されたエンジンは最高出力16馬力(グロス)を発揮する360cc空冷4サイクルV型2気筒OHVで、1959年に発売された軽3輪トラックの「K360」に搭載されたものをベースに改良し、アルミを多用することでエンジン単体でも軽量化されました。
駆動方式はエンジンをリアに搭載してリアタイヤを駆動するRRを採用。トランスミッションは4速MTに加え、軽自動車では初となるトルクコンバーターを用いた2速ATを設定した画期的なモデルでした。
R360クーペは1960年に2万3417台を生産し、軽乗用車市場で65%に迫るシェアを獲得するほどの大ヒットを記録しました。
しかしライバルのスバル360は、大人4名乗車を前提に設計されていたことから居住性で勝り、販売は巻き返されてしまいました。
そこでマツダは1962年に、セダンタイプの軽乗用車「キャロル」を発売し、R360クーペは生産を終了しました。
●ホンダ「バモスホンダ」
ホンダは2輪メーカーとしてすでに成功を収めていた1963年に、同社初の4輪自動車で軽トラックの「T360」を発売しました。エンジンは360cc直列4気筒DOHCが搭載され、当時の技術水準を大きく超えたモデルでしたが、販売的には失敗に終わりました。
そこで1967年に、T360の後継車として「TN360」が登場。エンジンは大ヒットした軽乗用車の「N360」から流用した360cc空冷直列2気筒SOHCエンジンを搭載。一転してTN360の販売は好調となり、1970年にTN360をベースにした「バモスホンダ」が加わりました。
バモスホンダはTN360のシャシに専用のボディが架装された非常にユニークなデザインのクルマで、キャブオーバータイプのフロントまわりには丸目2灯のヘッドライトを配置し、スペアタイヤを搭載していました。
ボディタイプは2人乗り、4人乗り、4人乗りフル幌の3タイプが設定され、キャビンは全車キャンバストップのオープンボディを採用。
また、一般的なパネルドアではなくパイプ状のものがドアの代わりに装着されるなど、カーキ色のボディカラーも相まって、一見すると軍用車のようでした。
キャンバス製のドア(カバー)が用意されていましたが、不意の雨でも慌てずに済むように、内装はシートに防水生地が使われ、メーター類も防水タイプが採用されました。
バモスホンダは軽トラックとしての使い勝手は良好だったといいますが、奇抜すぎるデザインで販売面では苦戦し、初代「シビック」の生産に注力するという方針もあって、発売からわずか3年後の1973年に生産を終了しました。
なお、バモスホンダのユニークなデザインが評価されたのか、特撮ヒーロー番組である「ウルトラマンタロウ」や「ジャンボーグA(エース)」の劇中車として採用されました。
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今回紹介した3台はかなり奇抜なデザインですが、現在のようにデザインの方向性が確立される以前はトライ・アンド・エラーを繰り返し、各メーカーともどんなデザインが売れるか模索していたのかもしれません。
そのため、昭和の時代にはユニークなデザインのクルマが多かったのですが近年は画一的な印象が強く、今の旧車人気を支える最大の理由といえるでしょう。
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