三菱タフ顔SUV「アウトランダーPHEV」が突然変異!? 良い意味で「電動車らしくない」その走りとは?
これほどの「劇的進化」なぜ実現? ダートコースも走ってみた
ではなぜ、これほどの進化が実現したのでしょうか。それは「基本素性の刷新」と「四輪駆動力制御(S-AWC)」の組み合わせによる相乗効果です。
先代のプラットフォームは、初代アウトランダー用(2005年~)を改良しながら使用しており、S-AWCは基本素性の悪さを補うために活用していました。
対する新型は、待望の新プラットフォーム採用で基本素性を底上げし、S-AWCはより高みを目指すために活用できるようになり、「1+1=3」のような伸び代が生まれたと筆者は分析しています。
ただ、良いクルマには欲が出てきます。例えばサスペンション、タイヤ、S-AWC制御などをドライバーファーストな味付けにしたスポーティなトップグレードの追加などはどうでしょうか。東京オートサロン2022に出展されたコンセプトモデル「ヴィジョン・ラリーアートコンセプト」の評判は高いと聞いているので、ぜひとも検討をお願いしたいところです。
今回は一般道に加えてフラットなダートコース(オートランド千葉、千葉市若葉区)での試乗もできました。正直にいうと「いくら走れるといっても、20インチのノーマルタイヤで大丈夫?」と思いましたが、スマートな見た目に似合わない骨太な走りを見せてくれました。
フラットといっても路面の起伏や凹凸はかなり激しいですが、そんな道をガンガン走らせてもボディはミシリともいわないし、サスペンションのストロークはもちろん吸収性も非常に高いため不安定な挙動になることもありません。
マッド路面をノーマルタイヤで走るのでパターンに泥が目詰まりしてしまい、グリップは雪道以上にツルツルですが、そんな状況でも2トン近いクルマをしっかりとコントロールしながら不安なく走れたのは、ドライバーの腕ではなく、間違いなくS-AWCのおかげです。
ちなみにドライブモードによる走りの違いは明確で、「ターマック」は旋回性重視でダートでは暴れ馬、「グラベル」は旋回とトラクションのバランス、「スノー」は安定志向で絶対滑らせない、「マッド」はトラクション重視で旋回はドライバーがコントロール――といったように、1台でさまざまな走りが可能です。
ツルシの状態でもここまで走れてしまうことに驚く一方で、この見た目ではオフロードに行き辛いのも事実です。となると、もう少しオフロードを意識したグレードが欲しいところ。例えばトヨタ「ランドクルーザーGR-S」やレクサス「LXオフロード」のように、オフロードに行きたくなるようなアクティブなモデルはいかがでしょうか。加えてオフロードタイヤや車高アップサスペンションなども設定できたら完璧です。
そろそろ結論に行きましょう。新型アウトランダーPHEVは、世界中に存在する電動車の中で最もオンロード・オフロードのバランスが優れた一台だと思っています。
もし筆者がキャッチコピーを付けるならば、「道があればどこへでも行ける電動車」です。そして、三菱の未来を支える重要なクルマだからこそ、先代と同じようにしっかり進化・熟成をさせながら育ててほしいと思います。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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